第6話 初めてのロボットクリエイト


次の朝、ジュンはフォトン博士に呼ばれた。


「ジュン、おいで。マテリアライザーが完成間近なんだ。後はこの光の鉱石をリアクターにはめ込むだけだよ。」


ニノが大切そうに両手で小さな箱を抱えてやってきた。フォトン博士は箱のふたを開いて明るく輝いている陽光石を取り出し、ジュンに見せてくれた。あらためて見ると

うす黄色の中に金色に輝く結晶が無数に入っており中心から強く発光している。とてもきれいな石だ。


「これが陽光石だ。万物に光と命を与える大宝鉱石だ。」


そういうとマテリアライザーのある部屋に入り、アームに石を渡した。アームはタワーの中心あたりにある丸い穴に鉱石をはめ込んだ。博士が手元にあるレバーを引くとヒュゥゥンと音がして装置が起動し、陽光石のある中心から黄色い光が放射され、複雑に組み合わさったカラフルなパーツもそれぞれ光り出した。


ジュンが見とれていると、博士が黒の指ぬき手袋を持ってきた。


「ジュン、これを両手にはめてごらん。」


ジュンは不思議に思いながら手袋をはめた。よく見ると手袋の表面には神経線維のような細かい筋がいくつもついていて、手を動かすたびに、動きを伝達するように小さな光がその筋を走っている。


「これはなんですか?」


「これははめている人の手の動きを感知してマテリアライザーに伝える役目をするんだよ。」


「こちらはゴーグル。これは、はめてみればわかる。」


ジュンはワクワクしながらゴーグルをはめてみた。

博士がスイッチを入れると視界の中にいくつかのメーターやアイコンが表示された。


「わーすごい!」


「その中にペンのマークのアイコンがあるから押してみなさい。」


ジュンはドキドキしながらグローブをはめた手を動かして空に浮いているアイコンを押してみた。するとカラーパレットや筆のマークがいくつか表示された。


「それはお絵かきツールだよ。」


ジュンは内心ガッカリした。なんだ、たしかにすごい機能だけど、ただ空間に絵を描けるだけのツールじゃないか。そう思っているのを見透かされたのか、博士がすぐに言った。


「お絵描きだけじゃないぞ。とりあえず、ここは危険なので外に出よう。」


研究所の前にみんなで出てくるとフォトン博士が言った。


「ジュンくん、いいから何か描いてみなさい。」


ジュンは空に手を伸ばしてグローブをはめた右手で試しに得意な赤いオープンスポーツカーの絵を描いた。


「わー!上手だね。すごく早く描けるんだね!」ニノが言った。


「描けたら、手を3秒強く握ってから、前方へ向け『コンストラクト』と大声で言いながら手を開いてごらん。」


ジュンは言う通りにした。


「コンストラクト!」


途端にグローブをした手のひらの中心から光がバチバチと音を立てて発生し、同時にものすごいエネルギーを感じた。


「!?」


なんと手の平に発生した光の円から、大きなスポーツカーがにょきにょきと出てきたのだ。手からあまりにも大きなものが出てきたので、後ろに吹っ飛ばされ尻もちをついた。


「いたたたた…」


ジュンは腰をさすりながら起き上がった。


「どうだ、これがマテリアライザーの力だよ。」フォトン博士が得意げに言った。

ジュンは駆け寄ってスポーツカーに近寄ってあちこちのぞいたり触ったりした。


「本物だ!本物のスポーツカーだ!」


「博士!とうとう成功しましたね!」


ニノがとても嬉しそうに言った。


「マテリアライザーはイメージして描いたことを魔法の力を入れながら、形にできるんだ。」


「これ、乗れるの?」


「もちろん!私が運転してみよう。」


博士とジュンがスポーツカーに乗り込んだ。

ニノは助手席に座ったジュンの膝の上に座った。


スポーツカーは軽快なエンジン音をたててすぐに平原の道をなめらかに走り出した。ジュンは今まで一度もスポーツカーに乗ったことがなかったので、興奮してあちこち触ったり、見たりしていた。


「ほんとうに走るんですね!本物なんだ!」


「もちろん。マテリアライザーは君の絵を描いてる手の動きと脳波を読み取り、必要なところは補って、精巧な機械を生み出すことができるのだ。ただし、使用者のイメージ力の強さと、それを表現できる画力が必要なんだがね。」


「なんでも作れるのですか?」


「人間や動物などの生き物は無理だ。鉱物エネルギーで動く機械なら創れる。乗り物や機械やロボットなんかは得意分野だよ。」


「ロボットも!?」


「そう。しかしちゃんと能力を発揮できるロボットをつくるのは、やはりイメージする者の特訓が必要だ。ロボットを作った後は君の手の動きと頭で考えるイメージで遠隔操作もできる。もし使いこなせれば、君の強力な武器になるだろう。」


「僕、やってみたいです!ロボットをつくりたいです!」


「よーし。では早速練習してみよう!」


ジュンは博士にアドバイスを受けながら空中に絵を描き、ロボットを作り始めた。一番はじめは、ガラクタの塊みたいな物体ができた。


「うん、最初はそんなものだろう。ロボットは更新しなければ20分で自動で消えるのでもっとたくさん作っていいよ。」


5回目くらいになるとしっかりと動く人型のロボットが出てくるようになった。しかし、ジュンはもう疲れてヘトヘトになってしまった。気持ちを込めてロボットを描くたびに右手のグローブに魔法のエネルギーが集中するし、ロボットが出てくる時はその圧力に吹っ飛ばされないように重心を低くして突っ張るので、身体中の筋肉が緊張してとても疲れるのだ。ハアハアと肩で息をしているジュンを見かねて博士が言った。


「大分いい形を創れるようになってきたね。しかしずいぶん疲れているようだ。栄養をとって、眠って脳と身体を休めた方がいい。また明日練習しよう。あ、そうだ、そのグローブとゴーグルの名前を考えておいてくれ。頼んだよ。それでは、また明日。」


博士は満足げに二回うなずくと、先に研究所に帰っていった。


「ジュン、頑張ったね!おいしいものを食べてよく休んでね!」


「ありがとう!」


ジュンは心地よい疲れに満たされていた。ロボットを創ることが出来るなんて、なんてすごいんだろう!

明日も頑張りたい!ワクワクする気持ちを胸に帰途についた。



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