第3話 闇のドラゴンの住処へ
さっそくドラゴンから大宝鉱石を取り戻す作戦の説明が始まった。フォトン博士が机に手をかざすと地図が浮かび上がった。
「ここがうちの研究所。ここから草原、砂漠、山脈を超え、極寒のツンドラ地帯を超えた先に大きな火山がある。」
博士が話すたびに必要な場所は色が変わったり、写真が浮かび上がった。
「ここが闇のドラゴン、フォールニクスの住んでいる火山だ。洞窟の入り口は燃えさかる炎で包まれていて、これまでは侵入が困難だったが、この新しく作った高速移動艇のルミナスフィアなら突破できるだろう。ドラゴンのいる洞窟まではルミナスフィアをニノが操縦して君を連れて行く。問題はここからじゃ。」
今度は山とその洞窟の断面図と、黒い大きなドラゴンの映像が浮かび上がった。
「まずニノの鉱石エネルギーを感づかれないようにエネルギーを隠すバリアを張る。そうするとニノは動きづらくなるので船で待機することになる。
ここからは君1人だけになるんだ。君がやることはドラゴンの巣まで歩いていき、この5つの封印装置をドラゴンの周りに見つからないように配置することだ。
この装置は魔法の光でフォールニクスの力を半永久的に最小限に抑え、体の大きさも縮ませることができる。
君はドラゴンが小さくなったその隙に5つの鉱石を拾い集めて船に戻る。そしてニノのバリアを解除して2人で脱出するのだ。」
「わかりました。もしドラゴンに気づかれたら?」
「それはかなり危険な状況だ。しかし君はこの世界のロボット達とは違い、鉱物エネルギーを発していないから気付かれにくいはず。もし見つかったら、腰に装備している光魔法の閃光弾を投げつけ、ドラゴンの目がくらんでいるうちに急いで船まで走って逃げてくれ。洞窟の穴は狭いからドラゴンも追いかけにくいから逃げるのは有利だと思われる。とにかく、二人の命を優先にして行動してくれ。」
「・・・わかりました。」
ジュンは覚悟を決めてうなずいた。
ジュンは博士から火の熱や寒さから身を守るシールド付きの、黒地に青いラインの入ったプロテクタースーツを渡された。スーツは脚や腕を入れた時はブカブカだったのに、着はじめるとどんどん縮んで行き、中心のファスナーを上げる頃には身体に不思議にぴったりになっていた。
「よく似合っているね。スーツの色が黒なのは闇に溶け込みやすいようにだ。」
ドラゴンを封印する装置、ニノの鉱石のエネルギーを隠すバリア、ジュンの食料などを船に積み込み、出発の用意が整った。
いよいよ出発の時が来た。
フォトン博士はジュンの両手を自分の両手で包みこんで言った。
「ジュンくん、頼んだよ。大変なことだが、これはこの世界で君にしかできないことなんだ。必ず鉱石を取り戻してほしい。君たちがドラゴン退治に行っている間、私はジュンくんが元の世界に戻るための異次元ワープホール発生装置の開発を進めておくよ。」
ジュンは博士の目を見つめて強くうなずいた。
「ニノも頼んだよ!しっかりジュンくんのサポートをしてあげてほしい。」
「まかせてください!がんばります!」
ニノは元気な声で答えた。
ルミナスフィアの中に入ると丸い小さな台座とその横に座席があった。
「ジュンはそこに座って。ここが僕の運転席だよ。」
ニノは台座に腰掛けた。すると台座が粘土のように変形してニノを包み込んだ。ジュンも座ると同じく乳白色のシートがジュンを包み込んだ。まるでぬるま湯の中に浮かんでいるような気持ちいい座り心地だった。
「出発するよ!」
大きなフロントガラスの上下に配置されたメーターやボタンがいっせいに光り、フラッシュスピナーは白く光り輝いて音もなく浮かび上がりすごいスピードで発進した。目の前に見えるのはこの世界特有の薄緑に染まった地平線と黄色く透き通った空ばかりだ。あまりの早さに雲は白く細い筋になって後ろに流れていく。
最初は物珍しくてキョロキョロしていたジュンだが、今までが緊張しすぎてたからか、座席の座り心地が良すぎるせいか、だんだんまぶたが重くなってきた。その様子に気づいたらしくニノが言った。
「ジュン、疲れてるよね。眠ったほうがいい。僕が運転してるから君は眠ってていいよ。」
その言葉をきいてジュンは安心して深い眠りにおちた。
次に目を覚ました時、薄黄色い空には薄紫の光をたたえた巨大な星のようなものが浮かんでいた。
「あれはなに?」
「起きたんだね、ジュン。あれはリュムさ。この星の衛星だよ。」
「そうなんだ。地球でいう月みたいなものかな。」
ジュンは空の3分の1を占める大きさのリュムを見つめた。
よく眠ったので頭も気分もスッキリしている。
「僕、ずいぶん長い時間眠っていた?」
「3時間くらいかな。あと火山までは半分くらいの距離だよ。」
ニノが手のひらをフロントガラスに手をかざすと2つの画面が現れた。
「上の画面は目的地までの地図で、足元の画面はこの船の真下の風景だよ。今は下に山が見えるはず。」
「ほんとだ。」
雪を頂いた山脈たちが高く低く連なっている風景が映っている。
「ジュン、それにしてもよく引き受けてくれたね。ドラゴンが怖くないの?」
ニノが前をむいたまま尋ねた。
ジュンは少し考えてからニノのほうを見た。
「うん、実はとても怖いよ。
でもね、話を聞いていてみんなが本当に困っているのと、この作戦がこの世界で僕にしかできない事というのがわかったし、・・・それにそんなすごい力の大宝鉱石を僕もこの目で見てみたい気持ちが大きくなってきたんだよ。」
「そうなんだ。 キミは勇気があるんだね。僕もできるかぎり、キミをサポートするからね。」
「うん、ありがとう!」
話をしているうちに足元を映す画面には雪に覆われた平原に凍った黒い川が、蛇のようにうねうねと続いているツンドラ地帯が見えてきた。そして前方には遠くに先の尖った山の黒い影が見えた。
「ニノ、山が見えるよ!」
ジュンは思わず指さした。
周りは一面雪に覆われた銀世界なのに、その山にだけは雪が積もっていなかった。灰色の煙がたちこめる空の下に、黒い山肌にところどころ赤いマグマが流れて不気味にたたずんでいた。
「雪がないね。」
「あの山はとても熱いんだよ。だから雪が降ってもすぐ溶けちゃうんだ。」
「ドラゴンのいる場所も熱いのかな。」
「ドラゴンは山のふもとの洞窟に住んでいるんだ。たしかに洞窟内部はマグマもあって温度は高いけれど、ニンゲンが死んでしまうほどの温度じゃないよ。30度くらいかな。それに、そのスーツは温度調節機能が付いているから、それを着ていれば涼しいくらいだと思うよ。少しくらいの火炎を浴びても燃えたりしないよ。」
火山は近づいてみると、思っていたよりもとても大きな山だということがわかった。
フロントガラスに照準が出てきて火山の下の方の炎が燃え盛っている場所をロックオンした。
「あそこだ!フォールニクスのいる洞窟に入るよ!」
ルミナスフィアは下降し炎の門を突破して、洞窟の奥深くに入ると静かに着地した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます