第63話 あやうく殺されるところだった
「いやあああっ、マルツォ、マルツォ!」
悲鳴を上げながらエウフェーミアは砕け散ったマルツォの
『ちょっとユウキちゃん、何があったのよ!?』
第四天使『アプリーレ』がクリムゾンセラフの腕をつかみ、ゆさぶってくる。
「いや……あの……」
勇輝は
「新技を見てくれって頼んだんだ。
マルツォが自分にやってみろっていうから。
大丈夫だっていうから。
それで……」
まさかこんなことになるとは、という顔で
軽い気持ちでおこなった実験が、とんでもない
「アアーッ!」
「大丈夫だったわ!
治せるわ!」
次の瞬間、マルツォの
エウフェーミアは人間の
あれがマルツォの
コアは聖女の手を離れて浮かび上がり、その周辺にマルツォの残骸ざんがいが集まっていく。
およそ一分後、マルツォはもとの黒い騎兵の姿に戻っていた。
「よ、良かった、ヤバかった……!」
殺してしまったかとおびえていた勇輝は、
乗っているクリムゾンセラフがガクリとひざをつく。
そこに修復を終えたエウフェーミアが近づいてくる。
「……あなた、いったいマルツォに何をしたの」
聖女の全身から赤黒い怒りのオーラがほとばしっていた。
エウフェーミアは見たこともないような凄まじい形相で勇輝をにらむ。
伝説の聖女の怒りは、
「答えなさい。
返答しだいでは許さないわ」
エウフェーミアはクリムゾンセラフの胸部ハッチを素手でつかんだ。
そして無造作にひっぱる。
バガアアアン!
なんと単純な腕力で鋼鉄のハッチが引き裂かれてしまった。
さらに聖女はそのハッチを後ろにほうり投げる。
ガラン、ガラン……。
音を立てて地面に落ちる。
まるで野菜のレタスかキャベツみたいに簡単に壊された。
守護騎兵の防御力がまるで意味をなしていない。
中にいる勇輝の姿があらわになった。
直接、怒り狂う紅い瞳に
殺される。勇輝はそう思った。
『待ってくれエフィ。
その子に罪はない』
勇輝をかばってくれたのは、他ならぬマルツォだった。
『私が
まさかユウキにここまでの力があるとは思わなかったんだ。
怒らないでやってくれ、エフィ』
「……そう」
エウフェーミアの身体から、フッと怒りのオーラが消えた。
「怖がらせてごめんなさいね。
でも説明はちゃんとして」
「わ、わかった」
勇輝はそう言うことしかできなかった。
もっと色々と、気のきいた謝罪くらい言うべきであったが、頭が真っ白になってしまってうまく思いつかない。
怪物を退治する者は、それ以上の怪物なのだ。
勇輝は恐怖とともに思い知った。
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