第64話 ものづくり魔法、禁じ手ver
「思いついたのは、敵の武器や防具を変形させてしまおうっていうアイデアだったんだ。
勇輝はエウフェーミアたちの前であらためて新技を
まずはサンプルとして等身大の
チョイと魔力を流すと、ニョキっと地面から
こういう魔法は勇輝の得意技だ。
「鎧の内側を変形させて敵に突き刺せば、絶対に回避できないし、一発で即死レベルの大ダメージを与えることができる」
勇輝が鎧の胸に手をあてると、鎧の背中から槍が突き出てきた。
胸部分の金属を槍に変えて、内側から突き破ったのだ。
「
これも回避のしようがない」
兜を触ると左右から不自然にひしゃげてきて、細長い棒状に変わってしまった。
もし誰かがこれをかぶっていたとしたら……、とほうもない悲劇に見舞われることだろう。
鎧や兜というのは戦闘中にはずれたら困るので、しっかりと身体に固定しておくものだ。
だから
「そこまでしなくても、足や腕の関節部分を曲がらなくしてしまえば動けなくなる」
勇輝が鎧の腕にさわり、同時に足をコンと軽く蹴る。
するとどちらもただの棒状に変形し、曲げることができない
これでは武器を振れない。
歩くこともできない。
「守護機兵っていうのは全身が金属の
大きいものは時間がかかるけど、こういうことも可能なんだ」
もはやグチャグチャに変形してしまった
といっても拳でコンコン、と軽くノックしただけだ。
次の瞬間、鎧のいたるところに細かい
「なるほど、ね」
エウフェーミアはポツリとそれだけつぶやいた。
先にマルツォのほうが思い切りやれと勇輝に言った。
勇輝もそれにしたがい思い切りやった。
その結果、マルツォの全身はこの騎士道鎧のようにバラバラになった。
この事件の過失は双方にある。
勇輝だけを一方的に責めるわけにはいかないようだ。
「……ごめん」
「わかったからもう謝らなくていいわ。
でもね、ユウキ」
エウフェーミアは勇輝に忠告した。
「あなた、この魔法を生身の人間につかってはダメよ。
これはさすがに残酷すぎるわ。
こんなものを使い続けたら、きっとあなたの心のほうが壊れてしまう」
「うん、そうする」
二人の脳裏に鮮血やそれ以外のものをまき散らし、のたうちまわる人間の姿がありありと浮かぶ。
そんな悲惨な人間を作りつづける凶悪殺人鬼みたいな生き方をやっていたら、確実に精神の異常をきたすだろう。
『しかしマルツォを傷つけるとは大したものだ。
ユウキの力はすでに実戦を経験させてもよい段階に来ているのではないか?』
第七天使ユリウスが冗談まじりにいった。
地上の
あくまで世界の外側での戦闘こそ、彼にとって本物の戦闘のようだ。
『いや、まだだ。
ユウキは心・技・体、すべてが発展途上だ。
師として許可できない』
第三天使マルツォが大真面目に反論する。
『過保護すぎるのは戦士の成長を
『少女を戦場に駆り出すほど人手は不足していないはずだ』
勇輝のあつかいをめぐって二人が言い争いになってしまう。
『あら~、ユウキちゃんったら、モテモテじゃな~い?』
「え、そ、そうかな」
第四天使アプリーレにオカマ口調でからかわれて、勇輝は引きつった笑顔を浮かべる。
自分の魂は男だ……とか言うのは、肉体を持たない十二天使には意味のない話だろうから止めにしておいた。
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