第2話 冒険者
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気が付くと知らない天井
知らない女性
「あら、目が覚めたのかしら?調子はどう?」
「……あ…まぁ…ダルいな…」
「そう、ならいいわ!あなたが倒れてたの助けたのアタシなんだから、感謝しなさいよ?」
「…ありがとう…ございます…ここは…?」
「アタシの家よ。あなた見かけない感じだけどどこから来たの?名前は?分かる?アタシはマグリアよ」
「…コルト…クルザスから来た」
「はぁ!?あんたどうやって来たのよ!?ここはザナラーンよ?」
「ザナラーン?…さぁ…どうやって来たのか覚えてない…」
「まぁ無理もないわ。あなた酷い怪我で感染症起こしそうになってたもの。1週間も寝てたしね。無茶し過ぎてる感じだったわ。何があったかは覚えてる?」
「……どうでも良くなってたんだろうな…あまり覚えてない」
「若気の至りってやつかしら?呆れるわね」
「………」
「いいわ!しばらくここに住みなさい!アタシはこう見えて医者やってたのよ。ここはあまり人も来ない所だし、ゆっくりしてなさい」
「…ありがとう」
ハイランダー族のマグリアという女性の家にしばらく世話になる事になった
医者だったというのは本当らしい
薬を作っては近くに売りに出ている生活をしている
自分の身体にできた傷の治りも早い
しかし何があってここまで来たのか
あの頃からの記憶が飛んでいる
自暴自棄になっていたのは察しが付くが
それから3日ほど経つと熱も下がり、立ち上がって歩く事はできるようになった
助けて貰った恩を少しでも返せるように 力仕事の手伝いをしていた
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夜
(はぁ…またかよ…)
コルトが寝ている隣の部屋から欲に塗れた男女の声が漏れ聞こえる
(…ほぼ毎日じゃないか…?しかもいつも違う男ばっかりだな…)
大きな溜め息をつくと目を瞑り無理やり寝る
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「あらおはよう!酷い顔ね!」
爽やかな笑顔で朝の挨拶をするマグリア
「……あぁ、お陰様で寝不足だ」
欠伸をしながらあからさまに不機嫌な顔を見せるコルト
「どうしてかしらね?」
そう言うとニヤニヤ笑うマグリアにムカッとする
「…チッ…わざとだよな?」
「何の事?さぁ、朝ごはんさっさと食べな!今日も手伝って欲しい事があるのよ」
「はいはい…」
どうやら俺はこの女に遊ばれてるらしい
反応を見て楽しんでいるようにしか見えない
仕事はきっちりやってはいるが
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「ねぇ、コルト?今夜アタシの相手してくれない?」
「ブッ!!!ゲホッゲホッ!!…っはぁ!?」
夕飯が喉につっかえて噎せ返るのを見てマグリアは笑っている
「アンタ何言ってんだよ!?」
「何って本気よ?あんた拾った時は痩せこけて汚かったけど、いい男じゃない?最初はこんなに綺麗な色の髪だったなんて思わなかったわ」
「いやいやだからって何でそうなるんだよ…」
「悪い?アタシ、あんたの命救ってあげたんだけど?」
「………ずるい女だな」
「命の恩人に向かって言う言葉かしら?」
そう言って不敵に笑うと夕飯の片付けを始めた
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「…どうしたの?もしかして…怖いの?」
「いや…別に…」
「…した事ないの?」
「………今までじいさんとしか話した事も無かったし」
「フフッ…正直で可愛いわね!あんたモテそうなのにね!」
「……………」
「アタシが教えてあげるわ。こういう事もしっかり経験しておいて損は無いんだから!」
「…あ…そう…」
次の日は今までに無い程の寝不足だった
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更に1週間が過ぎた頃
「上手くなったわね!若いって良いわね〜」
「……毎晩付き合わされれば嫌でもそうなるんじゃないのか…しかも1回じゃないし…」
「若いと体力あって素敵よ?他の男は持たないもの!」
そう楽しそうに笑うマグリアを見て呆れるコルト
「マグリア…アンタのおかげで身体も完治した」
「あら?それ程気持ちが良かった?」
「違う!!!!!薬のおかげだ!!!!!」
「フフッ、本当にムキになって可愛いわね!」
この人には自分のペースをよく乱される
からかうのが好きなのか
身が持たない
「冒険者ギルド紹介しましょうか?」
「…え?」
「え?じゃないわよ。あなた冒険者になりたいんじゃない?見てればわかるわよ」
「本当か?」
「本当よ。アタシ、嘘は付かないの。暇な時間に鍛錬してたでしょ?あなたはとても義理堅くて正直者で嘘つけないから不安なのはあるけれど、いい冒険者になるのは間違いないわね。アタシ人を見る目はあるのよ?」
(説得力に欠けるような…)
「何よその目。アタシも充分楽しませて貰ったわ!これからは冒険者になって、広い世界を見るといいわ」
「ありがとうマグリア!」
「じゃあ最後にしとく?」
「いや、それはいい」
「ケチね!フフッ。各地の冒険者ギルドの場所を書いて置いたわ。それを見て行きなさい。悪い女に騙されないように気を付けるのよ?」
「……アンタに言われたくないな」
それからマグリアの元を離れ冒険者になり、光の戦士と呼ばれるようになる
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現在
「コルトさんが居て助かったよー!我々じゃここのモンスターは強くて敵いませんよ!」
「私で良ければいつでも手伝いますよ」
「コルトさん…紳士的でとても…素敵です…!お上品な育ちなんですかね…!カッコイイ…」
女性兵士が頬を赤らめて顔を隠す
「こら!任務中だぞ!シャキッとしろ!」
「は、はいぃ!申し訳ございません!」
クスクスと笑うコルト
(俺はそんな思うような人間じゃねぇんだよな…)
任務を終えて帰宅する
エプロンに着替えて料理を始める
しばらくして小さな足音が近付いてくるのが分かる
「コルト!ただいまー!お腹すいちゃったー!」
「おかえり白雪、服に泥が付いてるぞ」
「え!?うそ!?えぇ〜〜これお気に入りなのに〜!」
そう言ってむくれる白雪の前にしゃがみ、頭に手を置く
「よしよし、服洗うから先にお風呂に入ってきな」
「む…また子ども扱い…」
「今日和食作ったんだけどな〜!早くしないと冷めちゃうな?」
そう不敵に笑うと白雪は慌ててお風呂に走って行った
「ふふっ…さて、服洗うか」
小さな事でも人の役にたてる
少しでも心は救われている気がする
平和な日常がこれからもずっと続けばいい
それだけでいい
それだけで俺は幸せでいられる
昔語り Kolto @kolto441
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