昔語り
Kolto
第1話 虚
物心ついた時から、俺は1人の老人と凍えるような寒さの中、洞窟で暮らしていた。
クルザス西部
吹雪、雪が深く積もった極寒の地
近くに温泉が湧き出ているのが唯一の救いか
ミッドランダー族の老人
この人が俺の育ての親だ
血が繋がってない事は誰が見たって分かる
俺には黒い鱗に覆われた身体、角、尻尾がある
何でもイシュガルドという所ではドラゴン族との争いが続いていて、俺の見た目では異端者と思われ処刑されかねないらしい
老人からは外に出る際には常にローブを深く被って行けと言われていた
俺には小さい頃の記憶が無い
どうしてこの人は俺を育てたのか、この人には何があったのか、最期まで名前すら教えては貰えなかった
この人曰く、俺には余計な事は何も残したくなかったそうだ
極寒の地での食料確保は簡単では無かった
少し歩けば高地ドラヴァニアに行ける
そこで好意的なグナース族と取引をするのが定番だった
厳しい環境だったが苦では無かった
老人からは生きる為の知恵を教えて貰いながら、厳しく優しく俺を育ててくれた
17歳になる頃、身体の自由が利かなくなってきた老人の代わりにグナース族から 薬や食料の取引に行っていた
帰ると老人は無惨に死んでいた
そこらには荒らされている跡があった
恐らく留守の間に盗賊が入り込み、殺されたのだろう
金目のものが無かったせいなのか、それの憂さ晴らしなのか、老人の死体は見るにたえないものだった…
何か前にも見たような光景
頭が殴られたように痛む
同時に激しい憎悪が沸く
こんなにも自分は無力で大事な人を守る事ができない
どうしてこの人はこんな姿で死ななきゃならない?
力のない者にどうしてここまでの事ができる?
悔しい。憎い。大事なものを奪われるのはもう沢山だ
遺体に着ていたローブを被せ、洞窟を埋め
その場を去った
めちゃくちゃな感情のまま、ひたすら歩き続けた
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