第3話

 友達の千佳が死んだのはちょうど一年前のことだった。


 その日は千佳といつものように公園で遊ぶ約束をしていたのだ。


 遊ぼう。


 ただその一言だけで何時に公園で会うのかがわかる。なにせいつも決まって休日のお昼御飯が終わったあとだったかは、とくに時刻を告げる必要がなかった。



 けれど、その日に限って奈乃は急遽病院に行かないといけなくなったのだ。



 お昼を食べていると突然の電話。


 大好きなおばあちゃんが危篤状態だという知らせ。


 奈乃は両親につれられて急いで病院に向かった。千佳との約束なんてまったくというほど念頭になかった奈乃は、千佳に行けなくなったことを連絡することを忘れていた。


 どうにか一命を取り戻した祖母にホッと撫で下ろして帰宅の途についたのは、すでに日が沈みかけているころだった。


 車に揺られて自宅へと向かっていると、公園の前にパトカーが止まっていることに気付いた。



 なんだろうと思い、一度団地のそばにある駐車場に車を止めると、奈乃たちは家に戻るでもなく公園のほうへと向かった。



「なにか、あったんですか?」


 母が野次馬たちのなかにいた知人に尋ねた。


「千佳ちゃんがね」


「千佳ーーー!!」


 母に尋ねられた知人が説明しようとした瞬間に公園のほうから女性の慟哭が聞こてえきた。



 聞き覚えのある声だ。あれは、千佳の母親の声だった。


 奈乃は思わず駆け出した。


 すると、担架が公園から出てくるのが見えた。この上には布が被せてある。それに付き添うように歩くのは千佳の母親の顔。何度も何度も千佳の名をよんでいる。


 奈乃は担架に乗せられている人物を確認する。


 千佳だ。


 血の気を完全失っている千佳の姿がそこにあった。


 千佳の体はそのまま救急車に乗せられた。



 ピーポーというサイレンを鳴らしながら、千佳と彼女の母親を乗せた救急車が走り去っていく。



 それから間もなく、千佳が死んだと告げられた。


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