ヒストリー12 〜アイリとレオ 愛という名のもとに編〜


ヒストリー12 〜レオの記憶〜



今から十数年前。



僕は今、広い広い海の中にいる。

そこは愛と優しさと温もりで溢れている。

僕以外は誰もいない。

でも寂しくないんだ。

心は確かに満たされているから。

・・

声が聞こえる。

この声が聞こえるたびに

僕は安心する。


?《あ!あなた、またお腹を蹴ったわ。》


?《そうかー、お前はよく、ママのお腹を

蹴るなぁ。生まれてきたら、きっと

ヤンチャな子になるんだろう。》


ママとパパ。


?《あなた、そんな言い方はしないで。

この子は、何かを伝えようとしてるのよ。》


?《そうだな。待ちに待った大事な子供だ。

生まれたら、お祝いをして、アイリが作って

くれた服を着させよう。》


アイリ《ふふっ、あなた、まだ生まれても

ないんだから、気が早いわよ。

この子は、無事に生まれてきてくれるだけで

いいの。それだけで、ママは嬉しいわ。》


ブラグ《男の子だったら、レオ。

女の子だったら、ルナ。3日も寝ないで

決めた素晴らしい名前だ。》


アイリ《あなた、3日はいい過ぎよ。

でも、素敵な名前。》


・・


ママとパパが笑ってる。

その時間が、僕はとっても好きだ。

レオ。

僕の名前。

ママとパパが僕の為に考えてくれた名前。

優しい名前。

ママはいつも僕に話しかけてくれる。

僕を撫でてくれる。

抱きしめてくれる。

その度に、僕もママに話しかけるんだ。

ありがとう。

大好き。


ママがいつも僕に唄ってくれてる歌、

僕も唄えるようになったよ。


ママが寝る前に読んでくれる絵本、

すごく好きだよ。


ありがとう。


僕がまだ、空の上にいた時、

ママと出逢ったんだ。

ママが1番僕を愛してくれるって思ったから

ママを選んだんだ。


僕の前にママを選んだ子達がいたけど

その子達は、なんでかわからないけど

ママの子供にはなれなかった。


僕の番になって、僕もママの子供に

なれなかったらって不安になった。

その時に〝天使〟が現れて

キラキラ光る箱を目の前に置いたんだ。


僕はその箱を開けた。

でも箱の中には何もなかった。

〝天使〟は嬉しそうに笑ったんだ。

だから僕も笑い返した。


そして、僕はママの子供になれたんだ。


早く生まれて、ママとパパに会いたいなぁ。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖




北エリア クリピオ地方 7番地区 バルト 


ネルソン邸。 


《ブラグ視点》



ブラグ『う、生まれたのか⁉︎』


仕事を途中できりあげて、家に帰ってきた

ブラグが息を切らしながら、

使用人に聞いた。


使用人『はい!元気な男の子でございます。』


ブラグ『男の子かぁ。予定より

4日も早かったな。』


使用人『難産ではありましたが、

母子共に健康です。』


ブラグはネクタイを外して

手を洗い、アイリとレオの居る部屋に

向かった。


使用人『だ、旦那様!』


使用人が何か言いかけたが

ブラグには聞こえていない。


ブラグ(この日を、どれだけ待ったことか。

過去に2回も流れて、アイリを悲しませてしまった。

もう大丈夫だ。これからは今以上に幸せになれる。)


つづく。

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