15 市街地戦③

 てきぱきと負傷した部下やそれに手を貸す仲間の装備を代わりに持って集めるラッセンの背を追いかけて、ミグは口を開く。


「ラッセンさん、私も行きます」

「もちろんだ。一般国民のきみがいつまでもこんなところにいちゃいけない。まあ、うちの魔導師が遅れてるところにきみと会えたのは幸運だったけど」


 軽く笑って振り返ったラッセンの頬は、ミグを見てたちまち引き締まっていった。


「いいえ。私も兵士として戦うという意味です」


 瞬きひとつで厳しくなったラッセンの眼差しに怯む心を叱咤してミグは見つめ返す。ラッセンはあっという間に抱えるほど集めた剣やかぶとを持って足早に歩き出した。ミグも負けじとついていく。

 頭上から降り注ぐ敵戦闘艇と浮島砲台からの砲撃音はいまだやまない。しかし五つの聖塔を結んで五芒星に輝く〈五聖塔ルクス・ペンタグラム〉の白壁は、ちりひとつ通していなかった。


「私、攻撃はできませんが防御と治癒魔法はたくさん勉強してきました。きっと役に立ちます!」

「いや、〈二重デュオ〉で戦闘艇の砲撃防ぐ実力は正直うちの魔導師超えちゃってるけど……」


 ラッセンは前を向いたままぶつぶつと言った。その内容はミグを褒めているが、眉間に寄ったしわとけしてこちらを見ない視線がどうにも煮えきらない。ミグはさらに身を寄せて言い募った。


「ゼクストから戦術も教わってます! 普段から街の構造見て、戦術を組み立てるのが趣味の人だったので」

「うわあゼクストさんやっぱりただ者じゃねえわ。さっきの手際のよさもそれか。えー、やばい。普通に欲しい……」

「今欲しいって言いました!?」

「げ。言ってない! 言ってない!」


 明らかにしまったという顔をしておきながら否定するラッセンに、ミグはむっと唇を曲げる。住宅地区から高台にある王城地区にかけられた橋まで来て、坂道に歩みが鈍くなったラッセンの隙をつきミグは前に先回った。


「どうして意地悪するんですか。こんなに意欲あふれる優秀な人材を余らせておくなんて、王直属の近衛兵長として間違ってますよ」

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