第14話
「もう一度聞くわよ、ナナ。誰と話しているのかしら?」
カナタの鋭い視線と言葉に怖気づきながらも、私は精一杯の自然体で答えた。
「昔の友人だよ。ちょうど時間が空いたから、最近のことが話したくなって……」
「ふーん。その友達は私を懐柔するつもりでいるのかしら?」
しまった、聞かれていた。私は顔に出るくらい失態を悔しがり、カナタの直感を後押ししてしまった。
「突然現れたから怪しいとは思ってたけど、そうなのね。どこから入ってきたか分からないけどアナタはレジスタンスの一味。私を狙いに来たのね」
「さ、最初はそうだったけど。今は違うよ。カナタだってインタタール理研には不満があるんでしょ? だったら……」
私はカナタを宥めるように話しかける。しかしカナタはとても悲し気な顔をしていた。
それは私が知る限り、裏切られたという悲哀の顔だった。
「私はね。嘘と隠し事が嫌いなのよ」
カナタはもしかしたら最初から本当の話をしていれば、仲間に成ってくれたかもしれない。
でも仕方ないよね。私はカナタを知らなかったし、カナタも私を知らなかった。
だったら私は悪くないよね。
「さようなら、ナナ」
カナタはそう言うと、両手に下げていた狙撃銃を腰だめに構えて、撃ってきた。
私は雑な射撃にも拘らず、左側のどてっぱらに大きな穴を開けられた。
穴からは中にある管のような内臓を覗かせ、普通の人間なら致命的な一撃の跡だった。
「いったあ!」
私は苦悶の表情で傷口を抑える。しかしその大きな穴も、数秒の内に塞がり、回復していく。
「なによ……それ」
カナタは私の異常さに歯を食いしばり、そして先の話を思い出しただろう。スワンプマン、私が話した親友の化け物の話、それを思い出したはずだ。
「アナタも化け物だったのね」
カナタは狙撃銃から薬莢を排出すると、ボルトを押し込み弾倉から新たな弾丸が送り込まれる。
しかも今度は先ほどとは様子が違う。カナタの狙撃銃の銃口に白光が集中し始めたのだ。
「まず――」
私は本能的に危険を察知し、走って部屋から抜け出そうとする。
カナタはそんな私を旋回するように銃口で追いかけ、狙いを定めようとした。
「消えなさい!」
「わっ!」
私はカナタがトリガーに指を掛けるのを視界の端に捕らえると、身を投げ出すように跳んだ。
そのすぐ横で白銀のレーザーのようなものが壁を穿ち、貫通していく。
私は辛うじて肘から下を犠牲にしつつ、スワンプマンとしての致命傷を避けたのだった。
「こ、こんなのまともに食らったら死んじゃうよ」
そもそも私はいままで常人なら死んでいるような状況を何度も体験していたな、と思い返しつつ。やっと再生した足で立ち上がった。
「ナナああああああ!」
「わ、わあああああ!」
私は後ろから再び照準を定められるのを感じ、廊下を走り始めるのだった。
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