第6話

 夏の遊園地。

 この言葉はそれだけで心躍るようなフレーズだが、行ってみるとそれほど甘いものでは無いと言うことが身に染みる。


「暑いわね」

「暑いね」

「暑いですね」


 鬼塚さん、六芽さん、僕は遊園地に入ってからざまざまなアトラクションを次々と回った。

 お化け屋敷にジェットコースターやアスレチックなど様々だ。

 あまりどのアトラクションも混んでおらず、ほとんど並ばずに乗る事ができて順調そのものと言える。


「次はどのアトラクションがいいかしら?」

「……そうですね、そろそろお昼時なのでご飯でも食べませんか?」

「いいですね。室内ならちょっと涼しそうだし」


 六芽さんの提案に賛成し、鬼塚さんの方を向くと汗ばんだ髪を撫でながら鬼塚さんも小さく頷いた。

 入場ゲートで配られたパンフレットを確認し、近くのレストランを三人で目指す。

 

「どのアトラクションがよかったですか?」

「そうね、私はあの水飛沫のコースターかしら」

「私は二番めに行ったお化け屋敷ですね」


 遊園地を回っているうちに僕はかなり二人と話せるようになった。

 二人とも話せば結構面白いのだ。


「六芽さんはお化け屋敷好きなんですね」

「そうなんです。昔からお化け屋敷が好きで、一人で何周もしたりするんですよ」

「僕もかなり好きで、一人のお化け屋敷は心細さが一つのギミックと言う感じでいいんですよね」

「分かります。複数人で行くのとはまた違った面白さがあるんですよ」


 六芽さんは穏やかそうな見た目の割にホラーが大好きなようだ。

 

「あら、怖さなら絶叫系も負けていないわよ」

「ジェットコースターは爽快感もありますよね」

「えぇ、空を飛ぶ擬似体験と思えば爽快感も一入ね」


 鬼塚さんは絶叫系が好きなようだ。

 ジェットコースターだけでなくフリーフォールや回転ブランコなどを梯子している。

 僕は躊躇してしまうバイキングの端の席に嬉々として乗る姿は側から見て天晴れだった。


「あ、着きましたね」


 そうこう言っているうちに目的のレストランが見えてきた。

 レストラン前にはボードが立てられていて、人気メニューや新作メニューがポップ付きで表示されていた。


「美味しそうね。それほど混んでいないみたいだしすぐに入れるわ」

「運がいいですね」

「……えぇ、譜巴が一緒だもの」


 そう答える鬼塚さんは物憂げな表情だ。


「幸運の女神的な?」

「そうね」


 それだけ答えた鬼塚さんは店員さんに声を掛けに行った。


「六芽さんのおかげらしいですよ」

「……」

「六芽さん?」


 店内を見つめたまま何も答えない六芽さんにもう一度声をかけると、六芽さんはゆっくりと僕の顔を見て何かを言おうとした。


「二人とも、席が空いてたみたいよ」


 しかしその言葉が声になる前に鬼塚さんの声が掛かった。


「あっ、はい」

「行きましょう」


 六芽さんが何を言おうとしたのかはわからないまま、僕と六芽さんは鬼塚さんに案内されてテーブルに着いた。


 


 







 


 



 

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