第21話 ティッシュ発射

「おや、娘は部屋にいるようですね。こちらです」


レジーナに案内されて彼女の娘の部屋の前にやってくる。扉には、フィーナと書かれている。レジーナの娘だろうと予想できるが、それ以上に気になるものがあった。


『勝手に開けたらぶっ○す』


と書かれているのだ。うわぁ……と口から漏れる。レジーナもはぁ……とため息をついていた。


「フィーナ!扉を開けなさい。お客様よ!あなたを属神にしたいって」


ドンドンと扉を叩きながら声をかける。


「属神なんてなりたくないって言ったじゃない!この前、神にセクハラされかけたんだから!」


強めの女の子の声が部屋から返ってくる。それにしても酷い目に遭いかけたようだ。


「仕方ないですね、ソラ君。扉は開けられますか?」


「ええ、この前作ったスキルで解除出来ます」


報告会をサボるため、部屋を封鎖した時のスキルだ。閉めるだけでなく解除も出来る。


「フィーナ、大人しく開けないならこっちから行きますからね」


レジーナが言うが反応はない。ソラにお願いしますという表情を浮かべたため前に出る。


「解除っと、あれ?転移神様が転移すれば良かったんじゃね?」


俺がやる必要あったか?と思いながら扉を開くと、こちらに本が向かってくるのがわかった。


フィーナがぶん投げた物なのだろう。本がこちらに向かって迫ってくる。


時間がゆっくりに感じる。まさか、走馬灯ってやつか?と思いつつもギリギリ回避出来そうだなと思い首を後ろに逸らそうとするが、動かない。


「あぶなっ、ソラシールドね」


というフィニーに声が聞こえた。人の頭を盾にしたようだ。お前も普通に避けろよと思った直後、顔面に強い衝撃が走る。強い力で投擲されたせいだろうか。鼻からは血が出ているのが見えた。


そのまま、ソラは見事に後ろに吹き飛び


「おぼえ……てろ」


と言い残して、意識を失うのだった。





「ん?うう……」


ソラが呻き声を上げながら目を開く。するとすぐ近くから声がかけられた。


「おや、起きましたか?ソラ君。災難でしたね」


顔を覗き込むように転移神が言葉をかけてくる。近いなと思いながら、状況を冷静に考えてみると、どうやらこれは転移神の膝枕のようだ。


「俺に解除させたのは、こうなるってわかってたんじゃねーよな?」


「そうな、予知神じゃないんですから」


と笑っているが、腹黒い神のことだ。予想していたのだろう。鼻には、鼻血止めのためかティッシュが詰められていた。息苦しくないため、神界の凄いティッシュなのかもしれない。


「やっと起きたの?だらしないわね」


とフィニーが飛んでやってくるが、盾にしたことを忘れたわけではない。


「喰らえ、ふっ!」


鼻に詰められたティッシュをフィニーに向かって発射してやる。予想以上に完璧な軌道を描いてフィニーに直撃する。


「ぎゃっ!汚っ!」


お返しだ。人を盾にしやがって。



「目を覚まされましたか、娘が申し訳ありません」


お茶を運びながらレジーナが謝る。ソラと転移神とテーブルを挟んだ反対側にフィーナはむすっとした顔で座っていた。


頭にタンコブがあるためレジーナに叩かれたのかもしれない。


「それにしても、レジーナさんによく似てますね」


「もう少しお淑やかに育ってくれたら言うことは無かったのですけどね」


きちんと整えてないためか、髪が少しボサボサとしている。それ以外は、レジーナにとても似ている。


「あんた、いつまで転移神様の膝を借りてるつもりよ!」


痺れを切らしたかのようにフィーナが言ってくる。そういえば、膝枕されっぱなしだ。


「なに?羨ましいの?レジーナさんにやって貰えばいいじゃん」


「違うわ!あんた、人間だろ。神様に無礼だっての!」


「いや俺、人間だけど神の中じゃ良い立場だし」


無礼は、そちらだろうと思っているとレジーナが同調する。


「そうですよ、フィーナ。あなたはまず謝罪しなさい!」


と言われる。


「そうだ、そうだ「ソラ君、重いので降りてください」うわっ!」


転移神に無理やり膝枕から下ろされて、床に落ちる。


「ソラ、ダサっ」

「ぷっ……」


フィニーとフィーナが笑う。キレても良いだろうか?

即座にフィニーには、軽めのデコピンを入れて飛んでもらう。フィーナも再びゲンコツを喰らったようだ。



「やれやれ、本題に入りましょうか」


とソラが声をかける。なかなかに思い通りに進まないもんだなと思いながら……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る