第22話 フィニーはクビ

「それで、フィーナにはソラ君の属神になってもらえないかと思っています。レジーナからもあなたの身体能力の良さは聞いていますし、大いに適性があると思います」


 転移神が話をしてくれている。まあソラとしては交渉は得意ではないのでありがたいが。


「こう言ったらあれだけど、神様とかと関わるのとか苦手なんだよ」


 髪の毛をかきながら、フィーナが言う。


「わかる。俺も転移神様からのパワハラには酷い目に遭わされてるから」


 うんうんと頷いて同情する様にソラが答える。痛いので足を踏まないでもらえませんか?転移神様。


「そんなんじゃねーけど……いきなり過ぎるし」


「ソラ君は、神ではなく人間です。変わった子ですが、思いやりがあります。精霊達に好かれるのも彼の心の良さが表されてます」


 ソラの肩に腰掛けているフィニーを見ながら転移神が言う。精霊に好かれるのは難しいことなんだろうか?と疑問に思う。


「転移神様、考える時間を与えて貰っても良いですか?私は、属神になるのは良いと思うのですが、娘の人生ですから」


 レジーナが言い、転移神が頷く。ソラとしても構わない。フィーナはかなり真剣に考えているようだ。人生が大きく変わることだ。悩んで当然だろう。




 フィーナは、自分の部屋に入りベッドに座る。考え事をする時は、ベッドに座るのが彼女のスタイルだ。


「どうしたもんかな……」


「まあ自分次第よな。君が決めることだ!」


「なんで、アンタが私の部屋にいるのよ!」


 当然のように、椅子に腰掛けているのは、フィーナの悩みの種であるソラ・サイガだ。


「気にすんな。転移神様といると無茶振りとかしてくるから心が保たないんだよ」


「ソラはアドリブ苦手だもんね〜」


「そうそう」


 ぐでーんとした様子のソラとフィニーを見ていると、本当に変わった人だと思う。属神となり神に使えるということは、神界においては非常に栄誉なことだ。だが、フィーナとしてはそこまで興味のあるものではなかった。


 一部には、神だからと偉そうな態度をとる者もいる。実際、偉いのだが横暴なのは好かれるはずもない。


「無理することじゃないし、駄目ならそれで良いんだ。後悔しない選択を」


 ソラから言葉がかけられた。どこかその瞬間の彼は、先程までのふざけた様子ではない。神聖な何かに見えた。



「決めた……なる」


「へ?」


「私がなってやるってんだよ!属神に!」


 ビシッと指差し、フィーナが答えた。今後の彼がどのようになっていくのかが気にもなった。



「ふふーん!これで、私に後輩が出来たわね!私のことはフィニー先輩と呼びなさい」


 フィーナが飛んで喜んでいる。


「いや、お前はクビだろ、クビ。役に立たないじゃねーか」


「なんでよお!」


 ソラの顔にフィニーの蹴りが炸裂したのだった。



「やっぱり、これ大丈夫かなぁ……」


 とフィーナは早速不安になるのだった。

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