第19話 自衛の提案

 自分にまともな戦闘力がないことなどソラは理解している。〈無敵〉を使っても防げるのは5秒。こちらに攻撃手段がなければただの時間稼ぎだ。だから、手を打っておいた。最高戦力の援軍を呼び出しておいたのだ。


「助けてぇーーーーー!剣神様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 雲一つない空に向かって大声を上げると、属神3人組は驚いているのだろうか。ポカンとした表情になっている。だが、顔にもすぐに衝撃が走ることになる。


「さーて、呼ばれて来てみれば何やら楽しそうだねー!ソラ君?」


「助かります。俺じゃあ、どうにも出来ないんで」


 ソラと属神3人組の間には、いつの間にか剣神が立っていた。ソラは、この場所に移動する前に剣神に対してスマホでメッセージを送っていたのだ。そして、登場に至る。


「まさに神頼みだね、ソラ君」


「俺じゃ、フィニーを守れませんからね。彼女が傷つくのは見たくない」


「ソラぁ!私に土下座させようとしてたの忘れてないわよ!」


 忘れてくれてたらありがたかったが、流石に忘れていないかと思う。まあ剣神も来たことだから、偉そうに構えることが出来るものだ。


「おいおい!どうしたどうした!俺らをボコボコにするんじゃ無かったのか?ほらほらかかって来いよ!」


「あらら?怖くてかかって来れないのかなぁ?さっきまでの威勢はどうしたのぉ?」


 剣神がいることで、ソラとフィニーは属神を煽り始める。それはもう酷い顔をしての挑発だ。2人はこの様なタイミングだと気が合う。


「ここは引き下がることを勧めるね。すでに、熱神に迷惑をかけてしまっていることは確実だが、ここでさらに問題を起こすならば神の鉄槌が落ちる」


 普段と違う鋭い瞳で剣神が、属神を見据える。後ろにいるソラ達からは剣神の顔が見えないが、もし見たのなら恐怖を感じることだろう。


 属神である3人は、恐怖で震えを感じていた。


「ぐ……」


 神にここまで言われてしまっては、属神達も何もできない。3人組は、足速に去っていった。捨て台詞すらないのは、それだけ剣神の言葉が効いたということだろう。



「2人とも怪我してない?ソラ君もフィニーちゃうも元気そうでなりよりだ」


 振り返った剣神がソラ達をじっと見て言う。怪我などはないか心配してくれたのだろう。


「まあ、水をかけられた以外は特に危害はないですね。ありがとうございます、剣神様」


「ふぅ、助かったぁ。ありがとう、剣神様!」


 と2人が答える。


「大したことじゃないさ!ソラ君には、良いものをもらったからね。困りごとならいつでも呼んでくれていいぞ」


 ムキっと力コブを出して剣神様が答える。まさか、肉体派か?とソラは思いながらも聞くのはよそうと思う。




 一応、起きたことを報告するために、転移神の元に向かうのだった。




「ソラ君、無事でなによりです。剣神を呼んで対処したことは、良い判断でした」


 と転移神が答える。特にはお咎めは無さそうなので安心する。


「昨日の今日で、こんなことになるとは……今後もこんなことあったら嫌なんですけど」


 ソラとフィニーは、手から魔法で火を出して暖まっている。先程スキルジーニアスで作成した〈中級火魔法〉だ。



「私達も動けない時がありますからね」


「ソラ君自身を鍛えると言うのはどうだろうか?なんなら私が、鍛えてあげるよ?」


 剣神が拳を構えて答える。もしかすると鬼教官かもしれない。遠慮したいなと思っていると、転移神がフォローを入れる。


「彼女は、仲間にはとても優しいですから大丈夫ですよ!スパルタなことはしませんから」


「ああ、じゃあお願いしようかな」


 もし鍛えたら、剣神が報告会で使っていた神威解放とやらも出来る様になったりしないだろうか?と淡い期待を持つ。


 自衛手段を持つと言うのも悪くはないだろう。


「そうですね、他にも手があります!ソラ君も属神を持つんです。それも強い子を」


 パンと手を叩いて転移神が提案する。その考えは、空にとってなかなかに魅力的なものだった。


「俺も持てるんですか!ヤッタァ、仲間が増えるじゃん!」


 と喜びの声を上げる。なんだか、ワクワクして来た。


「ええ、ソラ君も地位的には神と同じですので可能ですよ。早速、属神についての簡単な説明を始めましょうか」


 と言い、楽しそうな表情を浮かべるソラに転移神が話始めるのだった。

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