第18話 信号機に絡まれた

「本気で殴る奴があるかよ……」


フィニーにぶたれた頬を押さえながらベンチに座る。チビと言ったのが原因だ。


「デリカシーがないわよ、ソラ!そんなんじゃモテないんだからね」


ソラの頭の上で髪の毛を引っ張りながら怒っている。髪の毛を引っ張られるのは地味に痛いからやめてほしい。禿げたらどう責任を取ってくれるのか。



そんなこんな話しているソラとフィニーに向かって水がかけられた。あまりの冷たさにヒャッと声を上げてしまう。


「おっと悪りぃ、手が滑っちまった」


目のあたりをぬぐいながらソラが顔を上げると、3人の少年が立っている。赤、青、黄色の髪をしている。目つきが悪くそこそこの顔立ちだ。


「信号機……、あ、いや。いくらなんでもその距離からじゃ、わざととしか思えないな」


「はぁ?所詮、神の代わりに来た代理の人間が。偉そうに口聞くんじゃねーよ」


うわぁ、嫌なのに絡まれたなぁ。これは早急に逃げたい気分だ。すると、耳元に来たフィニーがボソボソと呟く。


「あれ、熱神様の属神だと思う」


また知らん神様ワードが出てきたものだ。詳しくは後で教えてもらうとして生活に不便なもんだと思いながら、シンプルなことを聞く。


「俺と、あいつらどっちが偉い?」


「もちろん、中級神と上位神の間にいるソラの方が立場的に上」


フィニーの回答に、ソラはニヤリとする。何をやっても大して怒られないだろうと思った。


「俺に水をかけた奴は誰だ?」


「あ?俺だよ。というか、お前!俺達の熱神様に偉そうな口を聞いたらしいじゃねーか!ここで痛い目に遭ってもらうぜ」


赤信号が答える。雑な呼び名だ。


野蛮な奴らだな……と思いつつ脳を回転させる。頭は、冷静なソラだが(水を頭にかけられる物理的な冷やし方をしたからではない)武力的には勝てるか怪しい。


「とりあえず、こんな所で揉めてたら迷惑だ。場所を変えよう」


と言うと、周囲を見渡し仕方なさそうな顔をしている。


「変な動きをしてみろ、ここでボコボコにするからなぁ!」


と言ってくる。結局、ボコボコは避けれないようだ。こうなったらこちらにも考えがある。そそくさとスマホを操作した。




そして、少し歩いて周囲には誰もいない広場にやってきた。変な動きをしたらと言うので、途中で謎のダンスを踊ってみたらキレられた。


「いや、ソラは勇気があるわ」


とフィニーは感心していたが。



「それで、どうするつもりだ?」


「さっきから言ってるだろ!ボコボコにしてやる。そこに土下座しろ」


と地面を指さしてくる。全然怖くない。漫画やラノベでこのような展開はすでに履修済みだ。


「だってよ、フィニー。土下座しろよ」


「ちょっと!すんのはアンタでしょ!」


と口論を挟んでおく。


「おい、良い加減にしろよ!」


とこちらに向かって来ようとする。だが、こちらも準備が出来たので対応させてもらう。



ソラが両手をゆらりと顔の前まで上げて、格闘家のようなポーズを取る。


「さあ、いくか」


「お、やる気かよ!こっちは3人だぜ」


と信号機3人組は威勢が良い。やはり数は良いものだと思う。


ソラがゆらゆらと両手を動かしていく。3人の少年たちは、ソラが何をしようとしているのかわからないためまだ、迫って来ない。


そして、ソラが両手を口の側に持っていき添える。空に向かって大声を上げた。


「助けてぇーーーーー!剣神様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


盛大な他力本願。



その場の空気が静まり返るのだった。

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