第15話 実験体
「さーて、続けるのじゃ。熱神もその内目が覚めるじゃろ。どこかで寝かせとくのじゃ」
何事もなかったかの様に手をパンパンと払いながら最高神が言う。命を奪ったわけではないらしい。神様が死ぬのかと言うのもわからないが。
数人がかりで運ばれていく熱神を見ながら、
「まあ、よくあることです。気にしないで続きを始めましょう」
と転移神が言う。周囲の神様達も特に驚いている様子はない。報告会のたびに乱闘でもやってるのだろうか?だとすると次からも出席が憂鬱になる。
「私から説明を行わせて頂きます。本来であれば、ソラ・サイガを今回の報告会に参加させる予定はありませんでした。2日前に転移によりやって来たものに出来ることなどほぼないからです」
周囲の神々も転移神の言葉に頷いている。確かに転移したてで無茶だ。
「じゃが、ソラ・サイガはここに来ておる。それは必然的に、何かを成したと言うことであろう?」
「然り」
最高神の言葉に転移神が答えて、神々の注目がソラに集まる。なんか盛り上がって来た様だ。説明するように転移神に頷かれる。
ソラは、報告会の前に転移神から返してもらっていたスキルカードをポケットから取り出して掲げる。
「俺……いえ、私が作り出したスキルです。スキル〈無敵〉、使用時間は5秒。使用後は1時間使用出来ません」
いたってシンプルな、シンプル過ぎる答えだ。もう少し、テレビショッピングみたいにプレゼンすべきなのかなと思った。
だが、無駄な説明は要らなかった様だ。神々の顔を見れば一目瞭然だ。衝撃を隠しきれていないものが多い。最高神でさえ、引き攣った笑みを浮かべている。それに対して結果を知っている転移神は笑みを浮かべている。
そして、神々が口を開いた。
「すげぇ!無敵だってよ」
「とんでもない人間だな、おい!」
「ソラ君素敵!格好いい!」
「今日から俺とブラザーしようぜ」
「ソラ君、ハァハァ……」
ゲッ……とソラは顔を顰める。さっきまでの神の威厳とかどこいったんだよ……と思わせる反応だ。
てか、勝手にブラザー名乗るな!
そして、最後の奴は変態だろ!
男神か女神かでも対応が変わるかもしれないが、危険人物だろう。神々がざわざわと騒ぎ始めたため、最高神がため息を一度吐いた。
そして、声を上げる。
「静まるのじゃ!」
最高神の一喝が入り、広間は鎮まる。そして、転移神が続いた。
「まだ〈無敵〉スキルは試しておりません。ですので、ここで実演を行いたいと思ってます」
聞いてないですよ、転移神様。はてさてどのようにして行うのか。
「誰が〈無敵〉を使うんです?カードを渡さないと」
「ソラ君に決まってるじゃないですか?」
と言いながら肩を叩いてくる。本気らしい。
「どんな感じでやるんです?軽く殴る感じ?出来れば痛くしないで欲しいほど」
「本日のスキル検証には、剣神にご協力頂きますよ!さあ、彼女の剣戟を耐え切れるでしょうか?」
と転移神が言うと、剣神も壇上に上がってくる。こいつらガチだ、とソラは顔を青くする。まさか、これを話したら逃げると思って言わなかったのか?
「さーて、チャチャっと細切れだ!」
と言いながら剣神が背中の剣を抜く。
「冗談じゃ済まないから!」
「大丈夫ですよ、ソラ君。蘇生神もいますから!」
腹黒転移神がサムズアップしてくる。
「死ぬ前提じゃねーか!」
「あ、私急用が〜」
「どこいくんだ?相棒」
とフィニーが飛んでいこうとしたので、ガッチリと掴む。お前は道連れだ。
「剣神、任せますよ。神威解放なら良いでしょう」
「オッケー、転移神ちゃん。耐えるんだぞ、ソラ君」
これは早々ではあるが、死ぬかもしれない。神々は興味深そうに見ている。中には、やれ!やれ!と言っている神もいる。
「おい、フィニー。やれ!コールしてる神の顔を覚えておくぞ」
「ソラと同じことを考えてた」
こんな時に限っては息が合う2人だ。
スキルカードに意識を集中すると、カードが粒子となって自らの身体に入る。〈無敵〉のスキルを手に入れられたのがわかった。
「俺が合図しますんで、そしたら攻撃してください。5秒以内に終わってくださいよ、俺が死にますから」
「任せてよ、私も準備を終わらせるからね。《神威解放》」
直後、剣神から強いオーラが放出される。風圧すら感じる。フィニーは、ソラの髪の毛に掴まって飛ばないようにしている。ただでさえ強いのに、これはどうにも出来ないだろう。
「なんだそれ、ありかよ!」
「神様達の力を解放する神技。人が到達出来ない至高よ!」
やはり神とは、人ではどうにも出来ない存在なのだと実感する。剣神の目から稲妻の様なものが迸り、剣が紅く光る。圧倒的存在に恐怖すら感じるものだ。
「やるしかない!行くぞ剣神様、《無敵》」
「剣神の連撃!」
ソラとフィニーを光が包み込み、直後に果てしない数の剣撃がぶつかってくるのだった。
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