第13話 報告会の始まり

 神界にも夜の帳が下り、まもなく神々の報告会が始まろうとしていた。そんな頃、転移神の部屋、すでにソラの部屋になった場所では扉を激しく叩く音が響いていた。


「ソラ!出てきなさいよ、報告会が始まるわよ!」


「体調が悪くて……あとは任せた」


 絶賛仮病を使ってベッドに潜り込んでいた。やはり行きたくないものは行きたくない。そのためにわざわざ、《施錠》という外からは発動者以外では開けることが不可能なスキルを作って使っている。


「もお、お母様来たからね!知らないからね!」


 ドンドン扉を叩きながらフィニーが言っているが無視だ。


「どうせ扉は開けられないからな!これで明日の朝まで耐えてみせる。《スキルジーニアス》を舐めるなよぉ!」


 誰であろうとこの扉を開けることは不可能だ。と思ってイキっていると……



「ソラ君、行きますよ」


 転移神がベッドの近くに立っている。さっきまで誰もいなかったし、扉すら開けていない。


「あの……転移神様?どうしてこちらに?」


「転移しました」


 完全に転移対策するのを忘れていた。てか、アンタ転移使えるのかい!転移担当女神じゃないのかい!と思う。


「転移って入ってますからね。それより行きましょうか?」


 怖い笑みを浮かべてくる。早速万事休すだ。素直にスキルを解除して扉を開ける。



「やっと開いたわね!」


「君もしぶといね〜」


 フィニーと一緒に剣神も入ってくる。


「剣神様も一緒に行きましょうみたいな感じで来たんですか?」


「私は、転移神ちゃんに頼まれごとでね〜」


 と言いながらソラを掴むと担ぎ上げる。


「え?ドユコト?」


「ソラ君が逃げないように輸送係になってもらいました!」


 信用されてねぇ。と思いながらもそのまま運ばれることになる。



 報告会を行う場所は、神の城の別の場所にあり螺旋階段を登っている。どれくらいの神が来るのか聞いた所、たくさんと言われたので相当なんだろうなと思った。



「ソラ君が渋ってたので、私達が最後の入場になりそうですよ?」


「めっちゃ目立つ奴じゃないですか……」


 最後に登場して盛り上がりを下げそうだな……と思う。



 転移神様が扉の前に立つと、メイド2人が扉を開ける。


 圧巻だった。

 真ん中に豪華な机が置かれており、それを囲むように円形に大量の椅子が並んでいる。そこには当然神が座している。


 天井はとてつもなく高く、まるで果てがないようにすら見える。全てが豪華絢爛、自分などが踏み入れて良いような場所なんだろうか?とすら思ってしまう。


 ソラは一応、貰った服を着ているが、どちらかと言うと服に着られているような感じがして子供っぽさがあるように感じ、さらに自らの場違いさを痛感する。


「剣神様〜帰っちゃダメですか?」


「私に言われてもな。ダメだろう」


 まあ当然よなと思いながら神々の視線を集めながら入場する。


(ほう、あれが……)

(地味な顔ね〜)

(俺は、ああいうの嫌いじゃないぜ)

(所詮、ただの人間であろう)


「聞こえてるっての……」


 やはり来たくなかった。なんか本日の主役みたいになってるし。


「祝、神界入りという垂れ幕などを用意しようと思いましたが、時間がありませんでした」


 転移神が提案してたんですよ?と言ってくるが、逆にそれもそれで怖い。


 席順は、特には決まりはないらしく大抵は仲のいい神同士で座ることになっている。丁度3席空いているため転移神と剣神に挟まれて座る。知り合いがいるのは嬉しいものだ。



「あれって偉い人の席ですか?」


 少し高い位置に一席だけ空いている場所があるため転移神に聞いてみる。


「ええ、最高神様の椅子ですよ。まもなく来られるでしょうね」


「なるほど……納得です」


 それに間もなく来るなんて緊張が……と思う。自分がスキルのことを報告するときになんて言われるかわからない。怖い爺さんに文句でも言われそうな感覚がある。



 そして


「最高神様、ご入場です!」


 と声が上がった瞬間に、周囲の神々が一斉に立ち上がり両手を胸の前に合わせる。敬意のようなものなのか?と思っていると


「ほら、アンタも」


 フィニーにペチペチ頬を叩かれてソラも真似をする。いきなり不敬とかなりたくないからな。


 扉が開きコツコツと音をたてて入ってくる。


「ふむ、皆ご苦労なのじゃ」


 予想とは真反対の高い声、驚くもののそれも聞いたことがあるものだった。そして最高神の姿を視界に捉えると……


「最高神、ここに参上なのじゃ。さあ会議を始めるぞ」


 今日の昼間に街で出会った幼女、サーイちゃんが立っているのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る