第12話 鍛治神との邂逅
「へい、まいどぉ!」
と言いながら屋台のおじさんが注文したものを渡してくる。りんご飴のような物を2つソラは受け取りお金を払う。
「ほらよ、食べろ食べろ」
と言いながらベンチでワクワクと待っている幼女に渡す。
「ありがとう、お兄ちゃん!早速食べる」
と言いながら口をつけていた。隣に座ってソラも口をつける。りんごとは、違うがそれに近しい味がした。この世界特有の果物もあるのかもしれない。
「そういえば、君の名前はなんて言うんだ?」
何気に自己紹介してなかったなと思いながら聞いてみる。
「ん?妾か?あ……ゴホン、私の名前、サーイ!お兄ちゃんは」
妾って言ったな……なんか怪しい。面倒ごとに巻き込まれる予兆じゃないよな?と思う。
「サーイちゃんか、俺の名前はソラだ。まあ世間知らずって子供に言うのもあれだけど、よろしく」
子供と言われたことにサーイが若干頬を膨らませているが、お年頃と思うことにした。
その後もいくつかの屋台で食べ物を買って楽しんだ。ちなみに未だにフィニーとは合流できていない。
「楽しかったよ!お兄ちゃん、また遊ぼうね!」
と言いながらサーイは、ソラに手を振って帰っていった。余程楽しかったようで、スキップしながら戻っていった。
サーイに手を振って見送っていると、見慣れた妖精が飛んで来た。
「ちょっと!どこ行ってたのよ」
ややお怒りだ。自分で食べ物に釣られて飛んでいっただろうに。
「ちょっと子供がチンピラに絡まれててな〜。なんか食べるか?」
「もちろん、奢りなさいよ!」
食べ物で釣ればさっきまでのお怒りも鎮まったようだ。
「手刀でチンピラをね〜。一応武器とか持ってた方がいいんじゃない?見た目だけでも変わるもんよ。ソラって弱そうだし」
お菓子を頬張りながらフィニーが話す。地味にディスられているが気にしないようにする。
「武器か……いい店とか知ってる?」
「良い所あるわよ!鍛治神様のお店よ」
それは良さそうな武器がありそうだな……と思いながら、とりあえず見に行くくらいから始めようかとも思う。
早速フィニーの案内でお店に向かうと、
「お前に売る武器はねぇーーーーー!」
怒鳴り声が響き、店から冒険者らしき男が放り投げられていた。冒険者はそのまま走り去っていく。
「なぁ、フィニー。あれって」
「うん、よくあるよ」
鍛治神は気難しいタイプかぁ……と思い足取りが止まる。なんか、お前にやる武器なんてないと言われような予感だ。
「なんだぁ?店の前でボォーッとして、冷やかしなら帰ってくれよ」
体格がゴリゴリの髭を生やした男が店から出てきた。力仕事が得意そうだ。
「あ、いえ!武器を探したいなって思って……」
「鍛治神様、こいつの武器を買いに来たのぉ!お店見ても良い?」
フィニーは、特に変わらない様子で鍛治神様に声をかける。
「おお、フィニーちゃん!久しぶりじゃないか!さあさあ、入ってくれ」
途端に、微笑みを浮かべて答えてくれる。あら、こんな優しい顔もするんですか。とソラは思う。
店内に入ると、沢山の武器や鎧が置かれている。良いものは、やはりとてつもない値段だ。ここは売り場で鍛治を行う場所は、離れているのだろう。
「金を持って改めて来たい所だな……」
今のままでは手が出そうにないものばかりだ。スキル開発なんかを行って、金銭が潤ってから来ることにしよう。
そう考えつつ、見るだけならタダだからもう一度見ていこうとすると興味を惹かれるものがあった。
「ドラゴンのフィギュアか?」
剣を持ったドラゴンのフィギュアらしきものが置かれている。ドラゴンが剣を持っていると言うのは不思議なもんだが。
「うーん、微妙なセンスね。ドラゴンが剣持ってるわけないし」
「わかってないな、フィニー。現実じゃなくても創作は自由だろ?これはかなり格好いいと思うぞ」
普通に貰ったら喜ぶと思う。やはり妖精とはセンスが違うのだろう。
なんて話していると、鍛治神がすぐにやってくる。何やら興奮して鼻息が荒い。
「お主、この置物の良さがわかるのか?」
「え?ええ、カッケェーって思って見てました」
と答えると、嬉しそうに鍛治神は奥に引っ込んで一振りの剣を携えて戻ってくる。
「フハハハハ!これの価値が分かるとはな、気に入った!お主の名を聞こう」
「あ、ソラです!」
「ふむ、ソラ。お主にこの剣をやろう。それにこの置物もやるぞ!大事にしてくれ」
剣とドラゴンの置物を貰ってしまった。
「ラッキーじゃない!」
フィニーがドラゴンこ置物の上に乗りながら言ってくる。ドラゴンライダーみたいになっている。
「誰もがドラゴンが剣を持ってるのはおかしい!センスがないなどと言いおってな!褒める奴が出たらワシの特製の武器をやろうと決めとったんだ!」
「凄い言われようですね……」
とりあえず、剣を手に入れられたのは良かった。大事にアイテムボックスにしまっておく。ドラゴンの置物も、部屋に飾ることにする。
ありがたく頂いて帰ることにする。
鍛治神いわく、最高神様にもディスられたらしい。
「なんじゃ、このセンス。ダサいのぉ」
とのことだ。厳しいな……と思いながら、これから会うことになるのがさらに嫌になってきた。
この時、ソラは鍛治神の特製の剣がどれほどとてつもない物かわかっていない。それに気づくのはまだ先の話……
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