第11話 街の散策

 ソラは、街中で周囲を見回していた。商売人が行き交い、子供が楽しそうに駆ける。大通りに立ち並ぶ屋台からは良い匂いがしている。


「なんだかお祭りみたいな気分になるな……フィニー?」


 先程まで頭にいた妖精は、どこかに行ってしまったようだ。大概食べ物に釣られて飛んでいったのかもしれない。


 その内、戻ってくるだろうなと思いながら店を見て回ることにする。夜の神の報告会のことは忘れて楽しもうと思うのだった。



 神界と呼ばれるこの世界は、神と人間が共存している。神々は、天高く浮かぶ城に住む者もいれば街中に住んでいる者もいるらしい。


「案外、この中に神様がいたりするのかね」


 神であっても見た目は人と変わらない。昨日ここに来たソラには見分けなどつかない。神のオーラなんかが存在して、それを出していたりすればわかるだろうが、逆に目立つなと思う。




 鎧に剣を携える者を目にして良く見てみると、巨大な魔物を荷車にロープで縛り付けて運んでいた。周囲も尊敬の眼差しで彼らを見ているようだ。


「冒険者なのか?」


「おや、にいちゃんは冒険者を見たことはないのかね?お上りさんかい」


 ソラが珍しそうに呟いていたため近くのおじさんが声をかけてくる。


「ああ、昨日来たばっかりで……田舎者で知らないことばっかりです」


「そうかい、困ったら冒険者組合に行ってみると良いよ。色々と教えて貰えるし職業も斡旋してくれるから」


 親切に教えてくれたおじさんにお礼を言って歩き始める。神界とはいえ、冒険者もあるんだな……と思う。ほぼ縁は無さそうだ。



 再び、街を散策していると路地裏の方から声が聞こえてきた。


「おお……なんか危なそう……」


 覗いてみると、幼女がチンピラに絡まれている所だった。


「ほれほれ、金持ってねーのか?出さないと痛い目に遭っちゃうよぉ?」


「こんなガキからカツアゲとか、恥ずかしくねーのかよ?まあ金が手に入るなら良いけどよぉ」


 チンピラは2人だ。対する幼女は、こんな状況なのに平然としている。随分と精神が強いようだ。


「お前達にやるお金なんてないわ!」


 堂々と答えている。


 幼女の堂々とした答えを聞き、男が剣を抜いた。これは危険だと思い見ていると、幼女が声を上げる。


「そこのお兄ちゃん助けて!」


 マジか気付いてるんかい!と思いながらひょっこりとソラは顔を出す。


 はい、巻き込まれ決定!


 街に出ても厄介ごとはあるようだ。神界とはいえ、犯罪者もいる。スリなんかにも注意するように転移神に言われたものだ。


「お?兄ちゃんが金くれる?」


「へへっ、悪りぃけど痛い目に遭ってもらおうか?」


一瞬にして狙いが変わってしまった。


「はぁ……」


 とソラはひとつため息を吐いて、チンピラを見定める。さて、どうしたものかなと思っていると、


 ジリジリとチンピラ達は距離を詰めてくる。


「武器使うとか卑怯だと思わねーのか!」


 ビシッと指を刺してソラが言ってみる。


「卑怯で結構!さっさと金を出しやがれ」


 と剣を振りかぶったので、ソラは右手を出して手刀の構えを取り振り抜く。スキル〈剣術〉の効果が手刀に乗った。


 直後、パキンとチンピラの剣が折れて前髪を綺麗に刈り取っていった。見事な切れ味に放ったソラもチンピラも驚く。


「髪の毛ドンマイ。俺、なかなかやるじゃん」


 前髪が無くなっなチンピラに声をかけておく。スキル創造神の代わりとなるソラにも相当の力が与えられている。流石に、剣神と比べると届かないがチンピラで有れば勝てる確信が浮かんでいた。


「ち、ちくしょう!化けもんが!」


 チンピラ達は驚いて尻餅をついている。


 そんな彼らに近づいて調子に乗ったソラが言う。


「有り金、全部置いていきな?なんちって」


 冗談のつもりだったが、ソラが言葉を言い終わる前に男達は金を置いて青い顔をして逃げていった。


「あらぁー」


 冗談が過ぎたか?と思いながらお金を拾っておく。チンピラの金だし良いだろうと思う。



「お兄ちゃん……」


「はっ!」


 しまった!これは子供には引かれてしまうと思いながら幼女の方を振り返る。


「これはそのっ!」


 言い訳しようとすると


「お腹すいた!なんか食べたい」


 マイペースだなぁとソラは思うのだった。

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