第10話 〈無敵〉スキル

 転移神の驚く顔を見て、流石のソラでも自分がしでかしたことを悟った。


「今、〈無敵〉って言いましたか?ソラくん」


「ええ、もしかしなくても不味いです?」


 転移神の目力が凄いことになっている。もう目からビームでも撃ってきそうな勢いだ。


「いえ、悪いことではないので安心してください。ですが、〈無敵〉とは望んで生み出せるようなスキルではありません」


「なるほど……」


「スキルにはですね、先天的に我々が与えるものと、後天的に発生するものがあります。確かに過去に後天的に〈無敵〉のスキルを持つものは現れましたが、それも失われました」


 あまり理解できてないソラに転移神が説明する。スキルの持ち主が寿命で死んでしまえば持っていたスキルも自然と消滅してしまうものだ。


「〈無敵〉って、凄いんですよね?」


「そうでなければ私もここまで驚きませんよ」


 いきなり凄いものを作り出してしまうと言うのも厄介なことになりそうだ。〈無敵〉のスキルカードに触れて少しでもデメリットとかがないか調べてみる。優秀すぎて、さらに重労働とかは嫌だ。


「でも、〈無敵〉が使える時間は5秒とかですよ。それに続けて使うためには、1時間のインターバルが必要みたいですし」


 これならば性能が微妙と思われても仕方がないのではないだろうかと思い口に出す。


「ソラくん……5秒もあれば充分じゃないですか?デメリットかと思ってるかもしれませんが、充分に凄いですからね」


 ダメだったようだ。ノリで作ってみるんじゃなかったなと思いながら落ち込む。


「何落ち込んでるのよ、凄いんだから喜びなさいよ」


「いや、これ絶対他の神様の前で発表とかだろ?嫌だよ!目をつけられるよ」


「そうですね、最高神様にも報告しなければなりません。次の報告会に参加して能力の説明をしてもらいますよ」


 面倒なことになってきたぞ、とため息をつきたくなる。これは危険を冒してでも脱走したいなと思う。報告会の時間に仮病でも使いたいものだ。


「ちなみに、次の報告会っていつです?」


「明日の夜です」


 後24時間しかないじゃないか。そう叫びたかった。


「よりにもよってこんな時期に転移だなんてついてなさすぎる……来たばっかりだし見逃してもらえません?」


 ごまをする仕草で転移人に話しかけてみるものの、両手でバツの仕草で返される。


「確かに最初は欠席でも仕方ないかなと思ったんですが、流石に〈無敵〉のスキルは見逃せません。出席です」


 嫌だなぁ……とは口には出せない。仕方なくソラは受け入れるしかなかった。




「頑張れよ、ソラ。いつでも飯を食いに来てくれ」


 食事が終わった後、料理神が同情の視線を向けながら言ってくる。ソラ達の会話から、空がスキル創造神の代わりに来た者だと分かったからさらに優しくなった。



 どんだけ自分って可哀想な立場なんだ……とソラは思いながら、自室に戻りすぐさまベッドに入り込むのだった。


 疲れていたからかすぐに眠れた。





「起きろー!ソラ!フィニーパンチ」


「グハァっ!」


 寝ている所をフィニーに襲撃され起こされた。


「今日は、神々の報告会だよ!気合入れていくぞ!」


「お前がやる気出してどうすんだよ。俺は憂鬱なんだぞ」


 気合充分なフィニーにソラはため息をつきながら答える。


「まあまあ、最高神様も優しい神だし!大丈夫だよ!」


「とりあえず、まだ夜まで時間あるしご飯でも食べに行くか……」


 まだ時間はある、それまでに何か思いつくかもしれない。嫌なことは考えないようにして食事に向かうのだった。


「寝癖よし、これで快適」


 頭の方ではフィニーがソラの寝癖を直してくれたようだ。座り心地に問題があったようで今では満足気だ。



「夜までどうするかなぁ……」


 憂鬱な夜が来てほしくないが、何かしないのも嫌なものだ。逆に何かをやって嫌な気分を忘れたいまである。


「お母様が街の方に出てみたらって言ってたよ!」


「お、良いなそれ!遊びに行くか!」


 街で何か新しい発見もあるかもしれない。それを楽しみに朝食に向かうのだった。

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