遠い夏

チリン、とひとつ音がした。あれは確か母が吊るした風鈴の音だ。夏を運ぶ、我が家の音。

私はひとり、縁側に寝転んでそれを聞く。風が運ぶ軽やかな響きも。青々とした草の匂いも。

瞳を閉じてしまえば、全てが私だけの夏だった。


それはいつかさよならをした、遠い遠い夏の記憶。


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