月蝕

綺麗だ。取り戻せたのはその一言だけ。他はすべてあいつが奪っていった。彼女の瞳に映る、赤く欠けた月が。

どうだ、羨ましいだろうと。瞳の中から欠けていく姿を見せつけてくる。

それが悔しくて、僕の顔で隠してやった。

奪い返した瞳は、やっぱり綺麗だった。

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