第10話 恋
時代はバンドブーム。BOOWYだけでなく色々な個性のバンドがメディアに出てきた。そして当然のように近隣のいくつかの高校でもバンドが誕生した。老舗の楽器屋と、新しいスタジオS。この両店がライブを企画し、市内の高校生バンドシーンは一気に加速していった。
高校生。バンドだけの筈は無い。当然恋もする。この当時、私が在籍する高校は可愛い女性が多くて有名だった。その中でも真田美咲の存在は圧倒的だった。腰まで届きそうな長い髪。大きな目。
私は好きにならずにいられなかった。まさに一目惚れ。クラスも違い、殆ど話したこともない。でも好きな気持ちは抑えられない。
学校帰りの友達の下宿先。私を含めた友達3人は集まった。その時それぞれが好きな子に告白する。辺りが暗くなってきた時間、3人は近くの電話ボックスに向かった。
大木君は中学からの同級生の堀北さんに、川野君は今井さんに。そして私は美咲さんに電話して想いを伝える。
最初は大木君。
残念ながらうまくいかなかった。ただ、勇気を出して想いを伝えた彼の顔は清々しかった。そして川野君。「俺わかる?」緊張で2オクターブくらい高い声に、私と大木君は爆笑。でも川野君本人は真剣。彼も駄目だった。でも落ち込んだ様子は無かった。
そして私の番。
「俺と付き合ってくれないか」
「・・・ごめん」
あっけなく夢は砕けた。
公衆電話の受話器を置いた後、どうしても諦めきれない16才はもう一度受話器を取りダイヤルする。「もう一度考えてくれないか。」
そう。私はこの日、2回フラれたのだ。
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