修復
「ごめんな」
久しぶりに良樹と帰った。黙って二人で歩いていたら、突然良樹がぽつりと言った。
若干こっちを見ているが、俯いている良樹の顔にいつものような明るい笑みはない。だいぶ反省していることが嫌でも分かった。
「いや、俺の方こそ……ごめん」
今日何度目だろうという重い沈黙が辺りを覆う。
「ありがとう」
良樹の言葉に、俺は黙ったまま空を見上げた。
夕日に照らされて、空も雲もオレンジ色だ。
良樹を無視していた事の反省はある。だから「ごめん」と言った。だが、今までの事はまだどこか許せない。
それでも「許せない」の一言で突っ張るのはどこか違う。
それなら、今は「許したい」と思えばいいだろうか。
「許した」ではなく。
いつか「許したい」。
そう思っていれば、知らないうちに「許した」になっていて、自分の中でしっくり溶け込んでいるような気がする。
俺は視線を空から良樹に移し、口を開いた。
「そーゆーのは笑って言うんだよ」
「え」
ようやく顔を上げた良樹と目が合った。
「俺も悪かったし……良樹は笑ってねぇと調子狂う」
少し驚いた顔を見せた良樹は、ハハッ、といつものように笑った。
「ありがとな」
「うん、ありがと」
また沈黙が訪れた。しかし先程より重くない。
今はまだこんなだけれど、また前のような友達に戻れるだろう。
その日は案外遠くなくて、あっという間に前以上に仲良くなれるような気もする。
これからが楽しみだ。
友と道 陰陽由実 @tukisizukusakura
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