6月の出来事

第71話 押しも押されもせぬ存在らしい。

 中間試験が終わり、6月になった。


 学園のお嬢様方は、夏服に衣替えし、健康的な体を見せてくれている。

 ああ、やっぱり地味な冬服と比べて、夏服はいいですね。


 僕の隣にいる天ノ川あまのがわさんをご覧ください。

 大きな胸に服が引っ張られて、おへそが見えそうです。


 天ノ川さんほどではないけど、大石おおいしさんも意外と胸が大きいんですよ。

 腕を組んで、悔しそうな顔をしています。今回も僕の勝ちです。


 り紙を見て立ち止まった南出みないでさんは、長い脚が、とても美しい。

 そんなに恥ずかしがらないでください。今回は4位なのですから。




 ――という訳で、1学期中間試験の成績上位者が発表されました。




5年生成績上位者


1位  甘井 道程

2位  天ノ川深雪

3位  大石 御茶

4位  南出  紅




「ふふふ……さすが甘井さん、もう、押しも押されもせぬ存在ですね」


 天ノ川さんからは、嬉しい褒め言葉を頂いた。


「ありがとうございます。皆さんが応援してくれているお陰です」


 押しも押されもせぬ存在ですか。

 男子の代表として、次も頑張ります!


「ぐぬぬぬ……不純な交際をしている男子に、また負けるなんて……」


 大石さんは、クマさんと僕の交際を不純だと思っているらしい。

 結婚を前提としたお付き合いではないので、もっともなご意見です。


「『不純な交際』なんて言わないでください。これは『愛の力』です」


 でも、性行為なかよしの練習は、相手がいる時にしておいたほうがいいですよね?

 結婚した相手を満足させてあげられなかったら、悲しいですから。


「クロエさんは、調子が悪かったのかな?」


 南出さんは、前回まで4位以内に入っていた横島よこしまさんを心配しているようだ。


「横島さんはマー君に付きっ切りで、勉強どころではなかったみたいですよ」


 横島さんはマー君を相手に、こっそりと授乳の練習をしていました。

 ある意味、勉強熱心です。きっと、いいお母さんになれるでしょう。


 僕達の横には、6年生の成績上位者が集まっています。

 今回の1位は、アシュリー先輩だったようです。




6年生成績上位者


1位  服部阿手裏

2位  升田 知衣

3位  古田 織冷

4位  足利 芽吹




「アシュリー先輩、おめでとうございます!」

「ダビデさんも、おめでとう!」


 6年生の集団に近づき、アシュリー先輩に、ご挨拶あいさつ

 去年は、あんなに背が高かったアシュリー先輩。

 今では、僕と目の高さが同じだ。


「ダビデ君、もう、アシュリちゃんを抜いたんじゃない?」

「甘井さんは、この1年で、だいぶ背が高くなりましたね」

「ダビデさん、今からアシュリさんと背比べしてみたらどうだい?」


 1年で10センチ背が伸びた僕に、6年生の先輩方の注目が集まる。

 こんなに目立つ場所での背比べを提案したのは、2位の升田ますだ先輩だ。


「えっ? ここで、今から、ですか?」

「ダビデさんと背比べ? まだ負けませんよー!」


 アシュリー先輩も乗り気で、僕に背中を貸してくれる。

 勉強が出来て背が高いだけでなく、長い髪も、とても綺麗きれいだ。


「よろしく、お願いします」

「きゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ‼」


 食堂前のロビーで、大歓声の中、あこがれの先輩と背中を合わせる。

 ここで僕が勝てたら、この学園で最も背が高い生徒という事になる。

 背中よりも先に当たったお尻は、とても柔らかかった。




「――ダビデ君、おめでとう! もうアシュリちゃんを抜いたね!」

「ホントですか? やった!」


 審判のオリビヤ先輩が、僕の右腕を上げ、勝利を告げる。

 アシュリー先輩は「おめでとう!」と背中からハグをしてくれた。


「きゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ‼」

「ダビデせんぱーい! おめでとうございまーす!」


 後輩達からも、称賛の声が上がっている。


 去年まで低身長で悩んでいた僕が、背の高さで、学園1位になれるなんて。

 やっぱり、女子校って、最高ですね。






 後輩達の成績は、以下の通りだった。




4年生成績上位者


1位 羽生嵐 葵

2位 信楽  鼓

3位 高木 初心

4位 帯金 束沙




「すごいのです~! 104号室は、4人とも成績上位なのです~!」

「妹達も、よく頑張ったね」

「1年生の2位は、うちの妹だよ!」


 1つ下の学年は、羽生嵐はぶらしさんが不動の1位。

 本人は興味がないようで、この場には、いなかったが。


 2位の信楽しがらきさんは、貼り紙を見て大喜びしていた。

 3位の高木たかぎさんは、信楽さんと同じ104号室。

 4位の帯金おびがねさんは、ニータンこと小瀬こぜ新鈴にいれさんのお姉さまだ。




3年生成績上位者


1位 浅田 千奏

2位 安井 愛守

3位 本間 耶那

4位 尾中 胡桃




「今回も楽勝でしたよ」

「ダビデしぇん輩、いつも2位のアイシュも褒めてくだしゃい!」


「2人とも素晴らしいです。よく頑張ったね!」


 2つ下の学年は、今回もチカナさんが1位で、アイシュさんが2位。

 試験期間中も売店の仕事をしてくれた2人を、心の底から褒めてあげた。




2年生成績上位者


1位 真瀬垣里稲

2位 畑中 果菜

3位 大間 名子

4位 永井 小指




 姉妹学年では、リーネさんが1位で、ハテナさんが2位だった。


「リーネさん、学年1位、おめでとう!」

「ありがとう。ミチノリさんも学年1位だったわよね? おめでとう」

「ありがとうございます。お互いに、これからも頑張りましょう」


「5年生は、婚活で忙しいのよね? ミチノリさんは、どうなのかしら?」

「僕は、今のところ、全く忙しくないです」


「早めに相手を探さないと、ミチノリさんでも、売れ残っちゃうわよ」

「あははは、そうですね。僕も、そろそろ準備を始めないと」


 リーネさんの言う通り、5年生は、婚活を開始する学年だ。

 すでに婚約者がいるリーネさんに言われると、説得力がありますね。


 まあ、リーネさんの場合、入学前から相手が決まっていたようですけど。

 小学生の頃から婚約者が決まっているなんて、うらやましいです。




「お兄さん、学年1位、おめでとうございます!」


 2位のハテナさんには、先に声を掛けられてしまった。


「ありがとう。ハテナさんは、残念でしたね。去年は1位だったのに」

「去年もリーネちゃんが1位でしたよ。生理の時以外は」

「そうか。女の子は、いろいろと大変だね」


「そんな事より、もうすぐ『兄の日』ですけど、何か欲しいものあります?」

「ハテナさんが、僕に何かくれるの? いや、何もくれなくていいけど」


「そうですか? じゃあ、お兄さんの代わりに、エヒメちゃんにあげますよ」

熊の抱き枕エヒメさんに?」


「いつも同じパンツだと、かわいそうですから」

「あははは、そうかもしれないね」


 ハテナさんは、また僕にパンツをくれるらしい。

 今度は、どんなパンツなのか。とても楽しみだ。




1年生成績上位者


1位 大木七五三

2位 小瀬 新鈴

3位 加藤 千夜

4位 赤井 月寝




 1年生は、今回が初めてだが、1位が大木おおきさんで、2位が小瀬さんだった。

 大木さんは背が高くて目立つので、こちらから声を掛けてみた。


「大木さん、学年1位、おめでとう!」

「ありがとうございます」


「大木さんは字が上手うまいだけでなく、勉強も得意なんですね」

「いえ、勉強は苦手でしたけど、お姉ちゃんが分かりやすく教えてくれたんです」

「お姉ちゃん? あー、羽生嵐さんは、常に学年1位ですからね」


「そうなんです。『お姉さまって呼ぶな!』って、言われた時は、部屋を追い出されるのかと思いましたけど、本当はすごく優しくて……」


「あははは、それは、良かったです」

「はい。お姉ちゃんと仲良くなれたのは、センパイのお陰です」


 初めて会った時は、あんなにオドオドしていた大木さんが、今は明るい表情だ。

 仲が良い姉妹って、素敵ですね。




 大木さんとの会話を終えると、高木さんと信楽さんに、妹を紹介された。


「ダビデ先輩、この子が私の妹です」

加藤かとうチヤです。よろしく、お願いします」


 高木さんの妹が、加藤チヤさん。

 オリビヤ先輩に誘われ、茶道部に入部したらしい。


「ダビデせんぱ~い! こちらがツヅミの妹です~!」

赤井あかいツキネです~! 以後、お見知りおきを~!」


 信楽さんの妹が、赤井ツキネさん。

 寮で着ているタヌキの着ぐるみパジャマは、信楽さんのお下がりらしい。


 どちらの妹さんも、お姉さまに似ている気がする。

 同じ部屋で一緒に生活していると、表情や口調が似てくるのだろう。






「ただいまー!」

「お兄ちゃん、おかえり! 学年1位、おめでとう!」


 209号室に戻ると、小さくてかわいい妹が歓迎してくれた。

 そう。僕は、この笑顔が見たかったのだ。


「ありがとう。今の僕があるのは、ポロリちゃんのお陰だよ」


 僕の場合、大切な事は、ほとんど妹から学んだ。

 僕が人から好かれるようになれたのは、きっとポロリちゃんのお陰だろう。

 

「アマちゃん、そんなに勉強ができるなら、進学して普通に就職すればいいのに」

「あはっ、お姉さま、ひどい」


 クリさん、僕が学年1位の成績を維持できるのは、この環境だからです。

 学園の外に出たら弱肉強食の世界で、おそらく生きていけないでしょう。


 僕は自分が弱いオトコであることを自覚しています。

 だからこそ、平穏な主夫になれる事を望んでいるのです。






 ご愛読特典:優嬢学園お嬢様名鑑㉜


「ろりくま」の第71話を最後までご覧くださって、誠にありがとうございます。

 今回、新たに登場したお嬢様は、4年生1名と1年生2名です。


帯金 束沙 おびがねたばさ  4年生の出席番号4番。身長154㎝。

初登場は「ろりくま」第71話。1学期の中間試験で学年4位。

帯金とは帯封された紙幣ではなく、刀の鞘の紐を通す金具の事らしい。

30?号室から102号室に転居。部活動は不明。妹は小瀬新鈴。


加藤 千夜 かとうちや  1年生の出席番号5番。身長148㎝。

初登場は「ろりくま」第71話。1学期の中間試験で学年3位。

茶道部の部長であるオリビヤ先輩に勧誘されたらしい。

104号室に入居。茶道部に入部。姉は高木初心。


赤井 月寝 あかいつきね  1年生の出席番号1番。身長144㎝。

初登場は「ろりくま」第71話。1学期の中間試験で学年4位。

寮で着ているタヌキの着ぐるみパジャマは、お姉さまのお下がりらしい。

104号室に入居。部活動は不明。姉は信楽鼓。


上記以外にも優嬢学園のお嬢様方が多数登場する予定です。

お気に入りの子が見つかりましたら、フォローしてください。



それではまた。ごきげんよう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る