第7話
離れたくちびるの間を濡れた糸が伝う。朔良は蕩けるような溜息を吐くと、それを舌で舐め取った。
「なあんて、う♪そ♪飴ちゃん、あ♪げ♪る♪」
一方的に蹂躙され茫然自失していた左右輔はその言葉でようやく口の中がやたら甘いと気が付いた。更には固い異物感。口移しされた飴玉とそれを溶かした唾液の味だと気付くまでにはもう数秒を要した。
「お、おま…おま…」
激しい動悸と混乱。ずっと止めていたせいもあって呼吸が乱れ満足に言葉を紡げない。
「んふふ♪もういっこ飴ちゃん、あげようねえ♪」
朔良はすっかり腰砕けになってしまった左右輔の表情に品無く舌なめずりすると、それ以上は言わせずに再びくちびるを重ね合わせた。
無遠慮に舌を挿し入れると戸惑う彼の反応を楽しむようにその舌を優しく絡め取る。そして徐々に獲物を貪る獣のように息を乱し、すぐに一心不乱に欲情の限りを擦りつけ吸い上げ始めた。
左右輔は全く抗えず、ただ彼女に貪られるがままだ。
朔良には昔から男遊びの噂があった。噂自体は彼もよく知っていたし、それらしい人間関係が見え隠れしていたのも事実だったが、その矛先が付き合いの長い自分に向いたことは自覚出来る限りでは一度もなかったので正直半信半疑だった。
もしかしたらオレが偶然一度もそれらしいことを言わなかったからそういう対象にされてなかったってだけなのか?けれども今告白したから、それでこんな状況になっているのか?
彼女は自分を性的に見ているとわかれば相手は本当に誰でも良いってことなのか。
左右輔は今まで朔良相手に性的な好意の言葉や冗談を口にしたことが一度も無い。それは彼なりの純情であり、同時に矜持を気取った臆病さの表れでもあった。けれどもそれが裏目に出た。
まさか振られた相手にファーストキスをこれでもかとディープに奪われ蹂躙され尽くすことになろうとは。
彼女から立ち昇る甘い匂いと蠱惑の舌使いに翻弄されながら涙を堪えるのに必死だった。
理由はなんでも良いからとにかく今すぐ世界に滅んで欲しかった。
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