第11話 仲間を求めて 3

「おうおう。派手にやっとるやないか」




 エネ達と共に、だだっ広いギルドホールに到着すると、目の前に広がっていた光景は、数十人の筋肉ダルマ達が組んず解れつの大乱交パーティーを開催しとった。あ、大乱闘や。




「光モン出してないだけ、まだマシな方やな」




「当たり前だ。そんな事をすれば冒険者資格剥奪どころの騒ぎじゃ済まないからな」




 殺意を持って人を殺めれば重い罪になる。この世界の死生観や罪に対する処方は、日本にいた頃と大したブレはそんなにない。比較的、安心して暮らせる世界や。まぁ、人同士の営み限定での話やけど……




「エネさんや、さっきから気になってたんやけど、あのドワーフやばない?」




 そう、俺はこのホールに着いてから、ずっと気になっとる奴がおった。


 小さなぽっちゃり系の可愛らしいドワーフの女の子が、自分の三倍ほど対格差がある大男を片手で振り回して暴れとるんや。因みに、この世界のドワーフの女性は毛むくじゃらやないで。




「奴は ……張飛か?」




「また、訳の分からん事を…… あの子はドワーフでは無い。純粋なエルフ族の娘だよ」




 ふぁ!?




「冗談やろ?エルフ族ってエネみたいな長身瘦躯の美男美女しかおらんのじゃないの?」




 エネよ。なんでちょっと顔が赤くなってんの? 別にお前を褒めた訳やないで。




「エルフ族の中でも、あの子は少し変わり種なんだ。まぁ、訳あって今は私が面倒を見ててな…… 実はお前に紹介しようとしていた冒険者が、あの子なんだよ」




「じゃあ、あの子が俺と関係のある冒険者ナナミンか? うーん。全く身に覚えが無いねんけどなぁ」




 白髪の長い髪を大きなお団子にして纏めたナナミンという冒険者は、確かによくよく見るとエルフ特有の長い耳があった。容姿は一言で言うと、ゆるキャラやな。顔立ちも、美しいとは言わんけど、マスコット的な愛嬌のある可愛らしい顔をしとると思う。


 そんな、どうでもいい事を考えとる間に数人の冒険者がナナミンの周りを囲い込み、一斉に襲い掛かり俺は愕然としたんや。




「てか、あの子どんだけ頑丈やねん……何人もの大男達が殴る蹴るの攻撃を加えとんのに、全く効いてる様子もないし、微動だにしてへんぞ…… しかも、ノーガードって」




 俺なら一撃貰っただけで、体が粉々に粉砕されそうな打撃を喰らって、何で平然としてられるねん。


 エルフ族は、種族的に身体能力には恵まれとらん、見た目通り貧弱な種族やと思ってたんやけど……




「防御系のスキルでも使ってんのか?」




「スキルなんて使ってないさ。あの子は自身の純粋な体の頑強さで耐えているだけだよ。言ったろ?変わり種だと。エルフ族は生まれ持った魔力の保有量も「格」による魔力の成長も、他の種族と比べて高い事は知ってるな?」




 エルフ族は総じて魔力が多い種族や。冒険者をやってる奴らにとって魔力が多いって事は、それだけで大きなアドバンテージになる。なにせ魔法やスキルは自身の体内の魔力を消費して使用するからな、単純に手数が増えるって事は強みやで。




「理由は分からないがあの子の場合、それが逆転してしまっているんだよ。生まれつき魔力が極端に少ない代わりに、強靭な肉体と膂力を手に入れた。あの子の粗暴で単純な性格も相まって、ついた渾名が「森の小さな暴れん坊」だ。ふふふ。可愛らしい渾名だと思わないか?」




 それ唯の狂犬やん。バーサーカーですやん。全然可愛らしくもないし、なんちゅう人材紹介しようとしとるねん。


 もう一度、ナナミンの方に視線を向けると、また大男が棒切れの様に振り回され、今度は大声を張り上げながら暴れ回っとる……




「わはははははは。あちしこそ万夫不当の豪傑なのじぇ~~~!!」




 や、やっぱり、張飛やん。




「あ、あの!ギルマス?そろそろお喋りを止めて貰って、この騒ぎを収めて貰わないと収拾が付かないというか、ナナミンちゃんに触発されて関係ない冒険者まで喧嘩を始めちゃってますよ!?」




 受付嬢クラレンスの言葉に辺りを見渡し、、祭りの様な現状を把握した俺とエネは顔を見合わせ、お互い小さく頷いた。




「これ、収拾はもう付かへんのちゃうかな?」




「あぁ。無理だな」




「えええぇぇぇぇぇぇ!?ギ、ギルマス、何とかなりませんか?こんな状態じゃ仕事も出来ませんし、死人が出ればギルマスの監督問題になりませんか……?」




「ふむ。 ……それは困るな」




 エネ。俺の方をチラチラと見るんやない。タダ働きは絶対せんぞ!!


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