第10話 仲間を求めて 2
「私に腕の立つ冒険者を数名、紹介しろと?本気で言ってるのか?ゼンイチロウ」
「本気や。誰ぞええ冒険者を紹介してくれへんか?エネえもん。 あ。お構いなく」
俺は、サブ姐さんとの会話の後、すぐさまギルドに赴きエネの執務室へ突撃した。エネは俺の顔を見るや少し不機嫌そうな顔をしとったが、部屋に置いてある質素ながら趣のあるソファへ通してくれた。
見知らぬギルドの受付嬢が香りの良い、紅茶を勧めてくれる。うーん。マ〇ダム。
「クラレンス。こんな良い茶葉をこのバカに出さなくてもいいぞ。泥水で十分だ」
「え、えっと。もう、お出ししちゃいましたし。お客様、飲んだものを吐き出せますか?」
「ぬはは。お嬢さん中々、面白い返しやね。てか、何かすっごくご機嫌斜めやね。エネえもん」
「エネえもんと言うな。昔から、お前は頼み事や困り事があった時、その名を口にするが何か意味があるのか?揶揄られている様で、腹が立つんだが?それと、クラレンスはいつまで、此処に居るつもりだ?」
配膳が終わり、エネの座る椅子の後ろを当然の様に立っていた受付嬢が、悪びれる様子もなく笑顔で返答しよった。
「今迄、男っ気が全く無かったギルマスが、最近見知らぬ男を頻繁に部屋に連れ込んでる様なので、みんなが様子をみてこいと」
その言葉を聞き、長い耳を真っ赤にしたエネが叫んだ。
「くだらん事を勘ぐる暇があるならとっとと仕事をして来い!!馬鹿者!!」
脱兎の如く逃げていく受付嬢。あの子天然やなぁ。
エネも鉄面皮でクールな奴と思われてるけど、意外と感情を出すし、かわいい所があるんやで。
「ゴホン……話がそれたな。何人か見繕ってやる事は出来るが、いいのか?お前は……その、もう仲間を作る事は無いと思っていたんだが……」
「本来はそのつもりやったんやけどな、事情がちと変わってもうたんや」
長いスパンでダンジョンに挑むんやったら、計画的に金を貯めていって、堅実にダンジョンを攻略してれば、ソロでも俺の異能があればダンジョン制覇は出来たんやけど、一年って縛りが出来てもうたからには、もうこの案は使えん。
ソロで活動すれば確実に時間切れになるか、無理をして能力を使い過ぎた挙句、期日に金が収められんで、サブ姐さんに地獄の様な責め苦を受けさせられて殺されるだけや。
不本意やが仲間がおれば、それだけダンジョンの攻略速度も上がるし、俺の能力の節約にも繋がる。
報酬が仲間割になってまうんは痛いが、そのぶん数をこなせばええだけの話やしな。
しかし、ままならんもんやで……仲間はもう作らんとおもってたのにな。
「おい。聞いているのか?事情って何なんだ?」
「ん?……あぁ。事情……事情ね。それはまだ内緒や」
「ふーん。内緒か。……あぁ、そうだ。今度から私の執務室に訪れる時は、その甘ったるい匂いと、頬に着いた口紅を落としてから来るんだな。要らん勘ぐりをしてしまいそうだからな!」
エネは咎める様な視線を数秒、俺に向けると、そのままそっぽを向きよった。
右頬を手で拭うと、微かにやが薄い桃色の口紅が付着しとった。
うーん。女の人ってホンマ鋭いわ。
「まぁ、時期が来たら話すから、そうツンツンせんといて」
「しとらん!!」
エネの態度に苦笑いをしとると、廊下からドタドタと走る誰かの足音が聞こえ、俺達の部屋の扉を勢い良く開け放つ者が現れよった。
「ギ、ギルマス大変です!!ナナミンちゃんが、数人の冒険者相手に大立ち回りを始めちゃいましたぁぁぁぁ!早く来てくださいぃぃ!!」
さっきの天然受付嬢クラレンスが、良く通る大声で捲くし立てた。エネの方を窺うと、ウンザリした様な表情を浮かべ立ち上がりよった。
「分かった。ゼンイチロウ、お前も一緒に来い」
「へ?何で俺?冒険者のいざこざなんて日常茶飯事やん。そんな面倒事、関わりたくないで」
俺が抗議の声を上げると、俺の耳を無理矢理引っ張り、席を立たされた。
「腕の良い冒険者を数名、紹介して欲しいと言ったろ?その内の一人を今紹介してやる」
「おい、それって?」
「今、下のホールで暴れ回っているナナミンと言う冒険者だ。お前にも関わりのある娘だぞ」
俺に関わりのある娘?一体誰や……
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