第20話 つくり出された無力

人間ができる最大のことは、地球の環境を少し壊すくらいであることが分かった。


宇宙に出た人間にも限界があり、底無しの宇宙に立ちはだかることは不可能だった。


進化し続けた人間も、結果的には無に帰す。


現実のストーリーで限界を知った人間たちは、思考と情報の世界へと移り住んだ。


思考と情報は自由である。


情報の一つとして圧縮された僕は、人間の最終的な生の在り方に疑問をもたなかった。


生きる意味を失った人間の最終的な判断はどこかで納得できた。


インターネットが普及し、人々はSNSに夢中になった。


スマホから目を離さない人々の思考回路は、現実世界にはすでに無かった。


デジタルの世界に身をゆだねることに快を得た人々は、身体を捨てた。


思考と情報で如何様いかようにも変化できるデジタルの世界が安住の地となった。


グネグネした空間は0と1でできている。


時々フリーズする瞬間は、バグを処理しているのだと勝手に想像した。


最近、バグの頻度が増えてきた。


この世界も、あとわずかなのかもしれない。


コンピューターウィルスが蔓延している可能性もある。


僕が主体的であると思い込む思考も、この世界によって計算されつくられたもの。


無いという感覚も、0と1で処理されている。


身を委ねるしかない。


全ての思考と情報、感覚はつくり出されたものであるのだから。


もちろん、も・・・








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無い島 ビダイ物語 @kamibuu04

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