第18話 無い島にいない自分

無い島で僕の身体が消えかかっていた。


グネグネした空間との境界線は曖昧だったけど、自分の身体が消えかかると少し怖い。


不味い空気も吸いにくくなり、不安が高まった。


周りの環境と同化しつつある自分は本当に自分なのか。


自分の思いや考えは、もしかしたら、自分を確立するためのものであって、本当は無いんじゃないか。


無いモノを、有るように見せかけていたんじゃないか。


確かに、自分が生まれる前の何億年の期間は自分はいなかった。


数億年の歴史の中で、ほんの数十年間存在したからといって、それはいたことになるのだろうか。


空間の中の一つの分子として蠢いたうごめだけなのではないだろうか。


そんなことを考えているうちに、身体はほとんど見えなくなった。


グネグネした空間に混ざり合うように、僕は消えていた。


僕がいなくなったからといって、無い島に何か影響がある訳ではない。


何も変わらない。


僕の意識は何となく残っているが、形としての僕は存在しないので、有るのか無いのか。


結局、無い島で最後の試練が訪れた。


無い島にいない自分は本当の自分なのか。








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