第12話  メンタル狂人氷河期世代

無い島は地球のどこにあるかと聞かれたが、どこにも無い。

海だか空だか分からないグネグネした空間と、私との境界線は曖昧なままで、空気は美味いと思い込んでいたが、やっぱり不味かった。


無い島に大きな穴が開いてから何日が経っただろうか。

未来からの迷い人の話は続いた。


「ニホンへ行き、キョウイクを受けた超人の能力は飛躍的に伸びるという噂は、どうやら事実らしい。就職氷河期世代が牛耳るキョウイクカイは、異常なほど非合理的だそうだ。特にキョウシ自体が原始タイプの人間のため、かなり頭が悪く、時間と労力と質の低い問答を繰り返すそうだ。しかも、異常なほど元気で、疲れを知らない。超人の方が体力があるはずなのに、セイシン?メンタル?が狂人なため、大きな問題が起きても乗り越えてくるらしい。」


「超人も心の問題は解決できていないのですね。」


「心の問題は、後天的な要素が強く、ゲノム編集してもあまり効果が出にくいのです。原始タイプの就職氷河期世代のキョウイクは、はっきり言って無駄が多く、傍から見るとクズのようなイメージが払しょくできないのですが、なぜか、そこでキョウイクを受けた超人の心が鍛えられるようです。潜在能力を高めるきっかけとなるようです。」


「理屈では片付けられないことがあるのですね。」


「ブカツ、セイソウ、キュウショクシドウ、セイトシドウなど、理解不能なキョウイクを超人たちに施すそうです。特徴的なのは我慢を強いる部分です。自我を殺して、他者のために自分を生かすという精神構造をつくり上げるところにポイントがあるようです。殺しても殺しても滲み出てくるものが個性であり、その個性が唯一無二の財産になることに気付かされた超人たちは開眼するようです。」


「なるほど、そもそも、超人研究の基礎を築いたips細胞を発明した科学者も、ニホンの意味不明な教育を受けた人ですものね。その科学者は学生時代にラグビー部で、骨折を十数回したという謎のエピソードがあります。自我を殺し続けて見えてきた結果が、ips細胞と言えるかもしれませんね。」


「超人の中でも、富裕層はニホンへ流れ込んでいます。次の時代を生き抜くためには、超人である前に、原始であれが合言葉のようです。就職氷河期村の需要は高まりつつありますが、彼らも高齢化しています。定年制度が撤廃されたので、90歳以上で現役教師は沢山いますが、100歳を超えると精神が崩壊し始め狂暴化するそうです。異常に働き過ぎて、逆に超人を潰してしまうそうです。」


「ほどほどがいいですよね。」


何だかよく分からないが、現在働き盛りで、周囲から嫌われている就職氷河期世代は、未来では重宝されているということらしい。


長く生きる。無駄だと思ってもやり続ける。最後まで諦めない。このフレーズは原始的で非効率だけど、もしかしたら、未来を築く大事な要素かもしれない。


グネグネした空間に、針の穴のような光が差し込んだ。




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