第10話 迷惑!ロストジェネレーション世代
無い島には蚊がいない。
例年、蚊に刺されると謎の熱が出ていたので、今は安心している。
空だか海だか分からない、自分との境界線が曖昧なグネグネした空間は、味もそっけもない。
無い島には人も物も何も無い。
あるのは、ぼやきだけだ。
「働き方改革を邪魔するのは、ロスジェネ世代だ!」と息巻く若者がいた。
しばらく彼のぼやきを聞いてみた。
「俺は定時退勤したい、休憩時間もほしい、休日は休みたいだけなんだ!働き方改革をせよと指示してくる世代は、就職氷河期世代、ロストジェネレーション世代、就職雇用率が最悪だった頃に入社してきた連中だ。あいつらはたちが悪い!人に甘く、自分に厳しい。地べたを這いずり回るように働かないと、職を失うと心底思っている。だから、振られた仕事以上のことをしやがる。迷惑なんだよ!そういう連中が蔓延っているから、働き方改革が進まないんだ。まともなことを言っている若者たちが浮くんだよ!」
どうやら、意地と性格の悪い、働き虫の就職氷河期・ロスジェネ世代が嫌いな様子だ。就職氷河期世代は団塊ジュニアとして、人口も団塊世代に次いで多いから、社会で幅を利かせているのだろう。
「無職になる恐怖を感じているから、金も使わない。ただひたすら働いていやがる。社会にとって害悪でしかない。ロスジェネ世代はこれといった文化を生み出さなかったクズ世代だ。だけど、この何とも言えない空気感をつくり上げている時点で、ある意味、気味の悪い文化を生み出している気もする。」
ロスジェネ世代とは、1993年から2005年に学校を卒業し、就職活動に臨んだ年代であり、バブル崩壊の
この世代の特徴は、嘘に騙されない、金を使わない、文句も言わずひたすら働くである。
訳も分からない高倍率の大学入試、就職活動を経験し、これといったスキルも持たない、実力も怪しい、教育の失敗のような人間が大量に放出された。
実力が無い分、勢いと量で他を圧倒しようとする習性がある。
しかし、引きこもり、無職、ニートが一番多い世代でもある。
結婚せず、子どももいない。貯金も無い。年老いた親と、子供部屋に住み続ける人も多くいる世代だ。
天国か地獄しかない世代は、ハードワークを苦にしない。だって、やり続けないと地獄が待っているのだから。
就職氷河期世代に光をということで、無職のロスジェネ世代対象に、国家公務員、各地方の公的機関で採用が進んだが、あまりのもの高倍率(30倍~102倍)に地響きに似た悲鳴が聞こえた。
高倍率から選ばれた人は、大して実力は無いが、元気は人一倍あったのだろう。
閉塞感漂うこの時代に、明るく元気な人には何かしら人と仕事が集まる。
あいつらはムカつくと言っている若者の声は、ロスジェネ世代からすれば、うわ言にしか聞こえないかもしれない。
彼のぼやきは、気が付くとグネグネした空間に、一瞬でかき消されてしまった。
アーメン
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