第6話 狂った神様

無い島の夜は独特だ。


光が全く無くなり、何も見えなくなる。


海だか、空だか分からないグネグネしたものも、夜は見えなくなる。


自分と空間との境界線は無くなる。


自分が無い島の一部に取り込まれている時間なのかもしれない。


真っ暗で何も見えない時間を過ごしていると、薄ぼんやりと光が灯った。


人影があるような気がしたので、近くに寄ってみた。


見てはいけないものを見た。


グレーがかってはいるが、若い女性がうんこを食っている。


漂う匂いがうんこだった。


この無い島には匂いが無かった。


久しぶりに嗅ぐうんこの匂いは強烈だったが、懐かしさもあった。


「こんばんわ。」


「何?」


「何食べているのですか?(一応聞く)」


「想像にお任せします。」


「なぜ、そんなものを?」


「愚かな人間どもの行いを憂いているのです。SDGs(持続可能な開発目標)と言いつつ、自分たちが出すゴミについていい加減なままではないですか。まずは、自分たちがの出すものについて責任をもってほしいです。」


「糞尿に関しては、処理するシステムが存在しますよ。」


「勘違いしないでください。私が食っているのは、糞尿では無いです。人々の運を食っているのです。はやく滅びるように。」


「え?ではこの匂いはなんですか?」


「あなたの足元を見てください。それの責任を今この場でどうもつの?」


「あっちゃー」


無い島に来て何も食べずに過ごしてきたが、どうやら匂いの元は自分だったようだ。


「水も紙もないので、どうしようもありません・・・。気着替えも無いし。」


「やりようが無いことを知っていながら、生き続ける、ゴミを出し続ける人間の行いは、よいと思いますか?」


「仕方ないと思います。そういう存在だから。」


「私は、人を減らし、大昔の狩りの時代まで人間の歩みを戻すつもりなの。農耕をやり始めてから人間は狂いだしたから。土地を奪うために人々を殺し、科学を発達させ、再び土地を求め地球を飛び出した。」



無い島には若い女性の神様がいた。しかも、グレーがかった人々の運を食べる。


きっと、現実世界で苦労し傷つき、無い島に漂流したのだろう。


狂った神様は、灯りを消すと、無い島の一部に溶けていった。





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