11. レッスン3「アニソン」

       3


「アニメソングはお好きですか?」

「ああ、オレはアニメも、その中で流れる音楽も好きだ」


 今日もまた、ギターのレッスンでオレは露樹にしごかれた。

 昨日よりかは少ない回数だが、やはりムチで打たれた。それでも30回以上はな。まあ少しずつ上達しているわけだ。

 練習を終えて、2人は中庭のベンチで会話中なのだ。このベンチ、オレらの貸しきりになっているみたいで、とても愉快だぜ。


「アニソンっていうと、今も昔もけっこう流行だよな?」

「そうですね。テレビで特集番組があったり、声優さんのライブも盛りあがっていたりしているようですし」

「まあな。で、ツユキはどういうアニソンが好きなんだ?」

「いろいろありますけど、たとえばテレビアニメ『スモモ大戦』のOP曲オープニングはお気にいりです。ヒロインの仏門寺ぶつもんじすもも役をしている人が歌っています。すももたちキャラクターの振りつけも、きびきびと勇ましく、とてもカッコいいのです」


 露樹がまたゲーム機で曲を流してくれる。


「あ、この声の人って、映画『天海の城タピュラ』のテータ役だな」

「違います!」

「え、そうなのか」

「似ているかもしれませんけど、別の人です」

「そうか違ったか。はは」


 タピュラはオレのお気にいりのアニメ映画だ。

 ヒロインのテータは素朴でかわいい。ヒーロー役のニューとの出会いのシーンは神的で、どいつもこいつも絶賛している。

 このオレも、無垢な美少女とそんな出会いがあればなあ、と妄想していたものだぜ。現実には絶対ありえない、と頭では理解していながらも。

 その作品は今でもテレビでよく放映されているし、必ず観ることにしている。


「タピュラのED曲エンディングもなかなか素晴らしいよなあ」

「そうですね。ラストシーンから流れてきて、エンドロールの表示と合わせて、ニューと2人でテータの故郷へ向けて飛んでゆく映像が印象的です」


 ニューという少年も、いい味をだしているキャラクターだ。

 力こそ持っていないが、それでもテータを守るために命をかけるという、オレにはまねのできないやつだ。

 まあアニメのヒーローと同じことできるやつは、そうそういないだろうがなあ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る