10. 明るいけど胸がきゅうんとする曲

 露樹がゲーム内のマップから森を選んで、そのフィールドへ操作キャラクターであるヒロインのロリーナを移動させる。

 すぐ近くに青い「プルンプル」らしいやつが動いていて、ロリーナが杖で叩く。

 それで先攻でバトル開始になる。


「爆弾ボムボームを投げます」

「やってくれ」


 爆弾がプルンプルにあたって、一瞬にしてそいつのHPが0になった。


「勝ちました」

「そうだな。つーか、今のやつ雑魚ざこキャラだろ」

「はい。もっと強い敵だと、ボムボームを投げたくらいでは倒せません」

「けっこうおもろそうだな。バトルシーンの曲もテンションあがってくるし」

「そうです。カギタイくんもこれ買って、やってみてはどうですか?」

「うーん、考えとくよ」


 オレは裕福じゃないから、ゲームソフト1つ買うのもけっこう大変なんだ。


「これがエンディングを迎えたときに流れる曲なんです」

「お、それもノリがよくて明るい曲だなあ」

「はい。でもワタシ、これを聴くと、胸がきゅうんとするのです」

「どうして?」

「楽しかったゲームがこれで終わったのだなと思うと、とても寂しくて」

「ああそれな。判る判る」


 いいゲームほどずっと続けていたいものだ。

 クリアしたという喜びもあるが、ゲーム世界に入りこんで楽しいときをすごせていたら、その終わりを迎えるのが超つれーってやつな。


「ワタシ、このゲームは4回エンディングを迎えました。そのたびに、この曲を聴いて、回を重ねるごとに、寂しさが増して。今ではエンディングでなくても、こうして聴くだけでも胸がきゅうんとするのです」

「そうか。それほどいいゲームなんだなあ」

「はい、とても」


 憂い顔を見せる露樹も絵になる美少女だ。思わず抱きしめたくなる。


「さあオレの胸に跳びこんでこい」

「へ?」

「遠慮するな」

「遠慮します」

「なあツユキ」

「なんですか?」

「お前の髪、綺麗だな」

「え!?」

「ちょっと触ってみてもいいか。ナデナデしたいし、匂いを嗅ぎたいんだ」

「そんなこといけません。えっちです!」

「そうか。判ったよ」


 まあ無理矢理に触ったりはしないよ。少なくともオレはなあ。

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