09. ウキウキ気分で調合ができる曲

 オレの手に、その『極・ロリーナのアトリエ』というパッケージが渡される。桃色髪の少女のイラストが超かわいいぜ!

 レーティングはBで、パッケージの中身は空だ。

 露樹はゲーム機の電源をいれて、そのゲームを開始する。

 オレは横から、彼女の手にある機器の画面を見つめる。

 極・ロリーナのアトリエのオープニングが流れはじめる。


「いい感じだなあ。アニメーションはものすごく綺麗だし、曲もファンシーだ。そしてなにより、ヒロインのスカートの短さが最高だぜ」

「えっち」

「オレ17歳の少年だから」

「ふぅん。でもワタシが1番のお気にいりにしているロリーナちゃんに、そんなすけべな視線を向けないでください。汚れますから」

「すまんすまん」


 オレにはよく判るんだよ。そんな気持ちはなあ。

 自分の好きなキャラクターをなんらかの形で冒涜されたら、誰だって不愉快になるに決まっている。キャラクターの人権侵害だぜ。絶対に許さないぞ。

 ゲームやらアニメやらを愛してやまないオレは、その心を持っているつもりだ。


「これはアトリエ内で錬金術を使って、いろんなアイテムを作るのですけど、バックグラウンドミュージックを好きなように変更できるのです。歴代アトリエシリーズで使われていた曲を選べますの」

「たとえば?」

「アトリエシリーズ第1作『メリーのアトリエ』の曲がこれです」


 露樹はゲーム内の設定変更をして曲を鳴らしてくれた。

 それまでに鳴っていたBGMとかわって、リズミカルでポップな曲が流れている。


「楽しい曲だな?」

「そうです。ウキウキした気分で調合ができるのです」


 調合というのは、素材をもとに錬金術でアイテムを作る作業のことらしい。


「なにか作ってみてくれ」

「爆弾『ボムボーム』を作りましょうか」

「物騒だな。こんなかわいい子がそんなもの作るとはなあ」

「強いモンスターを倒すためには、とても強力な効果を持つ攻撃アイテムが必要になるのですから」


 露樹はゲーム内の調合画面を操作して「敵の動きを遅くする」という効果を持つ、ダイナマイトのような爆弾を作った。

 使用回数や追加ダメージなどの属性もつけられるようだ。オレが考えていたより、けっこう凝ったシステムじゃないか。


「ほう、奥が深いな。で、それ使って、なにを倒すんだ?」

「ちょっとフィールドにでて、戦闘をやってみましょうか。森にいけば『プルンプル』がいます」

「どんなやつだ?」

「体がゼリー状でプルンプルしています。カラーによって強さが違うのです」

「つまりは『スライム』みたいなやつなんだな」

「そうです」


 嬉しそうに答える露樹の表情がかわいくて、オレも嬉しくなるぜ。

 特に、香り立つような、長めでまっすぐの髪が綺麗すぎて、どうしても触ってみたいという欲望が湧いてしまう。

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