03. 青春ってやつな

「そういやあオレ、まだ自己紹介してなかったなあ」

「そうですね。人にはスリーサイズまで云わせておいて、ずいぶんと失礼でえっちな少年だなって、思っていました」

「すまんすまん。オレは2年1組、嗅鯛カギタイ建介ケンスケだ」

「カギタイって、かわった名字です」

「カガクも、かわった名字だと思うぞ」

「だって、それは芸名ですもの」

「ああそうか。だがしかし、お前こんなところで油なんか売ってていいのか? 今日は転校手続きとか、なにか用事があって登校してきたんだろ?」

「そうです。職員室までいかないといけないの。ワタシをそこへ連れてって」

「おうよし! 連れてってやろう。お姫様だっこしてな」

「ワタシ、ちゃんと自分の足で歩けますから」


 こうして、オレと17歳の少女が並んで歩き、階段をおりて1階にある職員室へ向かうことになった。途中では、これといって話をしなかった。

 彼女は黙ってオレのあとについてくる。1歩うしろを歩いている。

 同じ歳の女を連れて2人で歩行するなんてのは、人生で初イベントだ。オレは、自分が2足歩行する人間に生まれることができて、マジよかったと実感するのだった。

 職員室について、入口前で別れの場面となってしまう。


「じゃあな。オレ、次の授業があるからいくよ」

「次はサボりませんの?」

「国語だ。かなりサボってて出席日数がやばい。その担当の女教師が、やいのやいのとうるさいんだよ」

「やっぱりあなたは不良さんだわ」

「いやオレ、今日から改心するよ。お前と出会えたおかげだ。ありがとな」

「よかったわ。これでこの世界から不良さんが1人減ったのだもの」

「そうだな」

「さようなら。また明日です」

「おう」


 17歳の少女は職員室の中へ入った。

 オレは、駆け足で2年1組の教室へと帰る。

 走って階段をあがるなんて、小学生のガキみたいじゃないか。そうは思うけど、オレは段飛ばしで駆けずにはいられなかった。青春ってやつな。

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