02. 不良さん大っきらい
「授業はサボるし、そんな成人向けのすけべゲームやっているし。あなたって、とんでもない不良さんです」
「いやいや、オレをそこら辺のツッパリ兄ちゃんと一緒にするな」
「ワタシ、不良さん大っきらい」
「授業をサボったのは認めるよ。けど実は、浅くて狭い事情があるんだ。あとこの『艶闘カガク』はレーティングがDだ。だから17歳のオレがやって、なんの問題もない」
「あら、そうでしたの。それは失礼しました。でも、えっち」
「オレ、えっちなのも認めるよ。だがしかし、不良じゃあない」
「それなら、サボりの浅くて狭い事情というのを聞かせてください」
オレはゲームをセーブして、少女に釈明をしてやることに決めた。
こんなかわいい子とリアル世界で話せるなら、ゲームなんてどうだっていい。
「オレ、音楽はけっこう好きなんだけど、楽器が演奏できないし、しかも音痴なもんでまともに歌えない。なのに芸術の選択科目で音楽を選んじまった。今ではミスったと思ってる。オレは聴き専なんだよ」
「そうなの。お気の毒なことね。でも、そうだからといって、授業サボっていい正当な理由にはならないでしょ?」
「まあそりゃそうなんだけど、来週にギターの実技テストがあるんだ。それが憂鬱すぎて、今にも心が折れちまいそうだ。そんなオレの、茹でる前のスパゲッティ並みの心が折れないように、ここに避難してるんだ。つまりは、自己防衛本能というやつな」
「ふぅん。実技テストのために少しでも練習するほうが賢明だと思いますけど」
それができないから、こうしてエスケープしてるんだよ。
こいつは、もしかすると「できる子」なのかもしれない。だから、オレみたいな「できない子」の気持ちなんて、判ってもらえないだろうな。
「ワタシ、ギターは少ししか経験ないのだけど、ビオラの嗜みがありますの。それも同じ弦楽器だから、あなたのギターの練習に、少しくらいならつきあってあげられるかも」
「ええっ、マジで!?」
「はい。明日から練習しましょ?」
「やったぜ! 明日から毎日がホームランだ!」
「なんですかそれ。ふふ」
17歳の少女が再びかわいく笑っている。
サボりが大正解になるなんて、昨日までのオレは夢にも思わなかったことだ。マジで超ラッキーだったぜ。オレの高校生活も捨てたものじゃない!
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