第4話・大人数カラオケという名の地獄にて(2)
「せんちゃんごめんね、先生に渡さなくちゃいけないものがあって……」
「ん、先教室行ってるねー」
学校に着いてうわばきに履き替えると、
朝礼でスピーチを頼まれたとか言ってたからたぶんそれ関連だろう。
「優等生は大変ですな~」
「ね~。とか言って
「いえいえ、
「十分凄いと思うけどなぁ」
「そういえば
「……そう、かな」
そうじゃないから距離を置いたんだけど……高校デビューの効果が少しでも出てるってことにしておこう。
「蓑宮氏の氷のようなクールさも魅力的ですが、那花氏の優しい暖かさ、
「ありがとう」
智慧ちゃんが自分のことを名字で呼ぶの、最初は戸惑ったけどいつの間にか慣れちゃったな。
「私は智慧ちゃんの全部が大好きだよ」
「ぬ~! ずるい! そんなこと言ったら神庭だって~!」
可愛い抗議の手段として、またほっぺをもにゅもにゅと遊ばれる。大丈夫だよね、そんなにむくれてないよね……? ただ単純に触感を気に入ってもらってるだけだよね……?
「そうだ那花氏!」
「なに?」
「今日の放課後、クラスのみんなでカラオケでもと画策しているのですが……協力してもらえますかな?」
「もちろんっ、智慧ちゃんが行きたいって言ったらみんな喜んできてくれるよ!」
「ふふっ、那花氏は本当に人を喜ばせるのがお上手ですな~」
×
まだラインを交換してない人も多いため、登校してきたクラスメイトに男女問わず片っ端から声を掛けて智慧ちゃん主催のカラオケがあることを告げていく。既に部活や他の用事が入っている子も何人かいたけど、概ね良好な返事をもらえた。
中には『部活あるけど……今日は休んでそっち行くね!』と言ってくれる人もいて、智慧ちゃんのカリスマ性を改めて実感する。
「なぁ蓑宮~今日の放課後みんなでカラオケ行かね~?」
トイレから戻っていた高遠君は、職員室から帰還した明路を視認すると一目散に声をかける。……私には決して向けられない、媚びるような笑みで。……つらぁ。
「興味ないから」
しかーし明路の反応は相変わらず塩オブ塩。見てるだけのこっちですら背筋が凍り付きそうになるけど……明路なしで高遠くんとカラオケ行けるのは普通に嬉しい……!! でもなんか高遠君の不幸を喜んでばっかりだな……嫌な奴嫌な奴……。
「まじかー……それ聞いたら那花も行くのやめそうだな……」
えっ? なんで? 私やっぱり明路の取り巻きって思われてる!?
「せんちゃん今日カラオケ行くの!?」
高遠君の呟きを聞き逃さなかった明路はいきなり私の席まで小走りで近づき、目を爛々と輝かせながら手をとった。
「なんだ、言ってくれれば良かったのに~! 楽しみだね!」
あれぇ? 興味ないって言ってなかった?
「おー簑宮氏も来てくれますか! 嬉しい限りですなぁ!」
喜んでいる智慧ちゃんもいる手前妙な茶々を入れるわけにもいかない……。
くっ……あわよくば黙ってこっそり行くつもりだったのに……。
せっかくのカラオケでも……明路の引き立て役かぁ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。