第2話

「太陽の下にて」2


 五人の黒色人種達が来てから三ヶ月が過ぎていた。


「おい!おい!」

弥彦は黒色人種の一番小さい男を呼んだが気付かないで木刀を素振りしている。

「弥彦さま!彼はンノゴですよ」

豊介が彼の名前を言った。

「のご?」

弥彦はよく言えない。

「他の者は?」

「彼がンノゴ、あっちがギュルラ、槍を持っているのがアンゴョラ、団子食べてるのがポクバですよ」

豊介は指を指しながら言ったー。

「お前が彼等に詳しくなってる…」

「アチャラ!キャチキャチ!」

豊介が大きな声を出した。四人は走ってこっちに来た。

「豊介!彼等の言葉が喋れるのか?なんて言ったのだ?」

「まぁ、少しですが!こっちに来てくれと言いました」

「豊介にこんな才能があったとはな!今から彼等に名前を与える」

弥彦は彼等に一列に並ぶようにジェスチャーしたが誰も反応しない。

「チッチトシャカシャカ!トノトノワッシャイ!」

豊介が言うと彼等は一列に並んで正座した。

「おいおい!豊介!逆だよ!彼等に我らの言葉を教えるんだよ!お前が教わってどうするんだ!」

「すいません!まずは敵を知ることからかと思ったら彼らの言葉が楽しくなってしまいました!」

豊介は笑っている。

 弥彦は頭を搔きながら溜息をついた。

「アノ…ヤヒコサマ」

素振りしていたンノゴが口を開いた。

「お!なんだ?いうてみよ」

弥彦はンノゴに近付いた。

「ワタシタチ…タスケテ…クレテ…アリガトゴザイマシタ」

「おお!凄いぞ!豊介!」

弥彦はンノゴの言葉に感動して抱き付いた。

 それに続いて他の者も口々に「アリガト」と弥彦に言った。豊介は涙ぐんでそれを見ている。屋敷の奥でカエデも泣きじゃくっていた。


 ンノゴは赤松、ギュルラは唐松、アンゴョラは黒松、ポクバは岩松、庭師に行ってるカリャリは五葉松と名付けられた。彼等は弥彦に感謝して尽くしてくれた。


 そして、この土地は戦が再び始まったのである。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る