太陽の下にて

門前払 勝無

第1話

「太陽の下にて」


 日照りが強く照らし付けている畑にてふんどし姿の黒色人種が五人、鍬を振りかざして汗を大量に吹きだしている。

 その姿を涼しげに地主と商人が見ているー。

 黒色人種達は文句一つ言わずに畑を耕やかしている。

 そこへ一人の武士が馬を引いてやってきた。

「貴様ら何をしておる」

「これはこれは弥彦さま」

地主が足早に近付いてきた。

「この度、商人が見つけてきた奴隷なる代物でございます。この物は家畜と同じで面倒なことをやらせる為に外国から持ってこさせて、使い方を指南してもらっている所です」

「アレは人ではないのか?」

「人ではありません、家畜の類です」

「姿形は人ではないか」

「外国には変わった生き物が居るのですなぁ…あ!」

弥彦はずかずかと畑に入ってゆき間近で黒色人種達を見た。彼等は弥彦を見て笑った。

 弥彦も笑って返した。

「おい!地主!この者達は俺がもらう!直ぐに洗って着物を着させて屋敷へ連れてまいれ!」

そう言って馬に飛び乗り走り去っていった。


 弥彦が縁側で酒を呑みながら庭師と松について話していると、地主が黒色人種達の首を縄で繋いで連れてきた。

「弥彦さま!連れて参りました」

「貴様!洗ってから連れて来いと言ったろう!しかも縄で繋ぐとはこの者達は罪人か!」

弥彦は短刀を抜いて直ぐさま黒色人種達の縄を切った。

「カエデ!カエデはあるか!」

「はぁい!」

屋敷の奥から女性の声がした。

「この者達を風呂に入れて汚れを落としてまいれ!あと、六人分の飯の支度をしろ!」

女性が出て来て目を丸くさせながら黒色人種達を見ているが、直ぐに屋敷の奥へ連れて行った。彼等は大人しくカエデに着いていった。

「地主よ!あの者達は人だぞ!家畜ではない!家畜だとしても扱い方をわきまえよ!もう帰れ!」

地主はふてくされたように屋敷から出て行った。

「若さま!ありゃなんですかい?」

庭師が聞いてきた。

「あの者達は恐らく外国から売られてきた者達だ」

「人を売り買いするのですか?でっちと同じですかね?」

「ありゃ、でっちでもなく奴隷や家畜として売られてきたのよ」

「可哀想に…」

「だな…あ、棟梁!一人預かってくれ!庭のいじり方を教えてやってくれ!」

「ええ!無理ですよ」

「明日連れて行く!仕事終わったら此処へ帰らせろ」

「そんなぁ…」

庭師は肩を落として帰って行った。


 夜ー。


 居間でかしこまって固まっている黒色人種達を弥彦はジッと見ているー。

「不思議だなぁ…なぜ、この汚れは落ちないんだ?」

弥彦は一人づつみじっくりと見回しながら酒と食事を配った。

 カエデが笑いを堪えていて、その傍らで家臣達も笑っている。

「弥彦さま!そりゃそうですよ。肌が黒いんですから」

一番年寄りの権兵衛が口を開いた。

「世界は広いのだなぁ、わしらとは全く違う人が居るのかぁ…前に来た宣教師はデカくて白かったしな!世界は囲碁だな!」

「全くですなぁ!」

「あ、豊介!お前は明日からこの者達に言葉を教えよ!そんで、コイツを明日から棟梁の所に通わせろ!後の者達は読み書きを教えておけ!」

「無茶ですよ!」

のんびりした豊介はひっくり返っていた。


 鴨居弥彦ー。

 去年の戦で先代が討ち死にして家督を継いだ。

 家臣も数人討ち死にしたが弥彦は戦で手柄を挙げて領地は安定している。港町が比較的近くにあるために外国からの物がよく入ってくるようになっていた。


つづく

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