第2話隣の部屋にはHなお姉さんが住んでいます。
「あああ、クソが。もうちょっと耐えとけよ!」
千春は叫ばずにはいられなかった。
手元のスマホは、21時を指している。早くはないが遅くもない時間。千春にとってはいつも通りの退勤時間だった。
会社を出た時は、曇りだった。
あ、これはいけるなと確信した千春はなんの対策もせず、直帰した。
電車にのると、遠くからゴロゴロと嫌な音が聞こえた。しかし、まだ雲は耐えていた。そう。たぶんそこが分水嶺だったと千春は今になって思った。
改札を抜け駅を出る。
マンションまで徒歩で5分、駆け足なら3分といったところで、千春の肩に水滴が落ちる。
マズい、そう思った時には千春の足は駆けだしていた。
仕事柄、彼女は体を動かすといったことはほとんどしない。普段は、頭皮が心配な、横柄なオッサンか、ヒステリックで神経質なおばさん相手に、下げたくもない頭を下げて取引をしているから。
本当はもっと自分のアイデアをバンバンだして、相手に頼むではなく相手から請われるような仕事がしたいと思っていた。でも現実は甘くないことを彼女は5年間で痛烈に感じていた。
運動はほとんどやってこなかった。しかし、今日も今日とて自分の腰あたりを撫でながら食事に誘ってくるクソオッサン上司への鬱憤を晴らすように千春は全力で足を動かす。
「どうしてこの世にセクハラがなくならないんですかねえ!」
彼女の咆哮に呼応するように、雨足は強まる。勘弁してくれと思うが、ここで足を止めた方が被害が出ると思い、千春は止むに止まれず、エントランスまで一直線でかけた。
頭を振った後、髪をガシガシと弄りながら水滴を払う。
女としてどうなんだと、千春の心の中の上司が鼻息荒げながら突っ込んできた。
自分が作り出した脂ぎったオッサンのその言い分も少しはわかってしまう。バツが悪くなった千春は、自動ドアをくぐりながら心の中のオッサンに対して吐き捨てる。
「うっせえ、ばーか!」
「え? ごめん、なさい?」
「あっ」
こんな時間だ。
出入りはほとんどないだろうと千春は高を括って、気持ちを吐き出したが万が一に遭遇してしまった。
状況はよくわかっていないが、とりあえず謝罪してくれた女性はとても見覚えがある。
「すいません、佳純さん。仕事で嫌なことがあったんで誰もいないだろうと思って、大きな声で愚痴ってました」
「あ、そういうことなんだ。てっきり私が何かしたかと思ってびっくりしちゃった」
合点がいったというように、胸の前で両手を合わせる女性の名前は佳純。
千春たちの部屋の隣に住んでいる作家だ。本人曰く超売れっ子作家らしい。
私たちがこのマンションに越してきて挨拶をした時にはもう住んでいた。それ以来、話をするほどではないが、周辺で会う時にはあいさつ程度はする仲になっていた。
デフォルメされた動物がプリントされたエコバッグを持っているところから夜食かなにかの買い出しの帰りだったのだろうと千春は推測する。
すっかり日も暮れ22時も近いというのに佳純の服装はすごく気合が入っていた。
紺のレースブラウスに白のプリーツスカート。ブラウスの胸元についている大きめのボウタイが目を引く。キャラメルカラーのローヒールのコンフォートサンダルからラフさが伝わるがわかりやすいフェミニンコーデだ。
腰まで伸ばしたライトブラウンの髪に、優し気なタレ目。少しだけ目じりのラインを伸ばしてるところからも千春にはうかがえるものがあった。
端的に言えば、この人の女性らしさはとても計算されたものだということ。
佳純の顔は非常に整っている。ひとつひとつのパーツを見ればとてもくっきりしており世間一般に美人とか美麗とか言われる顔立ちだ。
しかし、彼女からはどこかゆるかわ(笑)とか、甘顔だという印象を持つ。そこが彼女の計算だ。
頬には甘い色のチークを入れ、リップもそれに似た明るい色を入れている。だが陰に寒色を薄っすら差し込むことでだらしなく見えない程度に顔を丸く見せている。
先ほども見た、少しだけ伸びた目じりのライン。よくよくみれば涙袋も少し大きくしていた。けれど、気づきにくいのはハイライトとシャドウの境界のぼかし方がメチャクチャ上手いからだと千春は理解する。
自分の顔の良さに対する理解が完璧で、こうなりたいという自分の理想のメイクがハッキリしていてかつ、それを実現させる技術。
全てを併せ持っているからこそ佳純の『オトナカワイイ』は成り立っていた。
「お、おーい。千春ちゃん? 反応がないと私も困っちゃうんだけどな」
佳純は、ボケっとしている千春に何度か手を振り、少しだけ眉を下げながら微笑んでいた。
「すいません。ちょっと考え事しちゃってました」
「大丈夫、全然気にしてないよ。それだけお仕事大変だったってことだもんね」
とても理解ある反応をする佳純に対して千春は少しだけ罪悪感がわく。佳純の顔面を観察していたら話を聞いていませんなんて口が裂けても言えなかった。
「じゃあ、一緒にエレベーター乗ろうか」
「あ、はい」
私に任せてよ、と体を少し反り胸に拳を当てるとブラウス越しに佳純の凸が強調される。
あざとすぎないかと千春は思った。あいにく千春はそういう対象として見られないのでなにも感じないが、思春期男子であれば人生滅茶苦茶にされてるんだろうなと取り留めもなく考えていた。
まあ、華乃にさせて見るというのは一考の余地がある。わざとぶかぶかの服で、布だけが寂しく地に垂れるというのも悪くないかもしれない。
「結構ビショビショだね。……ごめんねこんなのしかないけど」
「いえ、気にしないでいいのに」
エレベーターに乗り目的の階層のボタンを押した佳純は千春のスーツや髪についた水滴に気づき声をかける。
佳純はモノクロの小さなバッグからハンカチを取り出して肩や髪の水滴をふき取る。となれば自然と体が触れ合う。千春の背は160後半だが、佳純と向き合うと目線はちょうど佳純の額辺りにくる。おそらく157前後。
佳純が千春の髪を拭こうとすると自然と腕を伸ばすことになる。少しでもズレれば唇が触れ合う距離。
ほのかに香る甘い匂い。エレベーター内という特殊な空間。濡れた体を温めようと全身がピクリと少し震える。千春は必死に震えを抑える。佳純に触れ合うことがないように。少しだけ頬に熱が帯びるのを自覚する。胸の鼓動がうるさい。
華乃を抱きしめた時には、彼女の鼓動を感じるのが千春は好きだった。
だからだろう、こんなに近いと自分の鼓動を聞かれてしまうんじゃないかと千春は羞恥を感じていた。
その可能性を自覚すると鼓動はより増していく。聞こえているかはわからない。でも、千春にとってはとてもやかましかった。
「うるっさ」
「そう? そんなにエレベーターの音は気にならないけど」
無意識に口に出してしまった自分の愚痴。
それに反応されたことが少し恥ずかしいが、同時に自分の音が聞かれていないという事実に千春は安堵した。
「佳純さん、自分でふけるから大丈夫だよ」
「そう? じゃあ、これあげるね」
「いや、ちゃんと洗って返しますから」
気にしないと断ってもどう押し通されるだろうと察した千春は、佳純からハンカチを受け取り、自分で拭くことにした。
「やっぱり、千春ちゃんってとっても可愛いね」
「え、なに急に」
「口調はちょっとサバサバしてるのに、そうやってちゃんとおしとやかに出来るところとかギャップがあっては私は好きだな」
「そうですか?……まあ、ありがとうございます」
佳純の急な言葉に千春は少し戸惑った。別にがさつだとか男っぽい言葉遣いをしてるわけではない。ただ、自分の気持ちを一番表現できる口調がこれだというだけだ。
おしとやかというが、社会に出た後にごちゃごちゃ言われるのがうるさいから、世間一般の女らしいというものを高校時代ぐらいからこなせるように努力しただけ。
だからか、佳純の言葉は千春にはあまり響かなかった。しかし、褒められたのだから感謝は述べておこうと思った。
「きっと、彼氏さんとかもそういう千春ちゃんの女の子らしい部分にメロメロになっちゃったんだろうね。イチコロってやつ。でしょ?」
「彼氏はいません。できたことないです。……あと、メロメロとかイチコロって古くない?」
「わっ……そ、そうなんだ。私ってもう古い女なんだ。中古の女ってコト?」
「いや、知りませんけど」
新古車なのかもしれない。
千春は反射的にその言葉が出たが下品すぎてデリカシーにかけるのでぐっと堪えた。
しかし、千春にとって佳純がここまでセクハラかましてくるのは意外だった。あんなに狡猾な自己ブランディングを行っているのに、感性が旧時代寄りだったことに少し違和感を抱いたのだ。
作家というのは浮世離れした感性を持っていると勝手に思っていたがそうでもなかったんだと千春は自分の価値感を修正した。
そんなことを考えているとエレベーターの音がなる。目的地に着いたようだった。
「千春ちゃんは私が中古でも仲良くしてくれる?」
「いや、その話まだ続けるんだ……別に中古とか新品とか感覚の問題でしょ。私から見た佳純さんが佳純さんなんだから、そのくらいで好きとか嫌いとかにはならないけど」
「千春ちゃんはいいこだねぇ~……お母さん、こんなに立派な子に育って泣いちゃった」
「お母さんにはいつも苦労かけてたからね」
「それは言わない約束でしょ……もう、千春ったら」
ツッコむのも面倒くさくなって、適当に合わせたらもっと面倒くさいことになった千春は頭を抱えたくなった。
「あはは……それじゃ私はここなんで。佳純さん、おやすみなさい」
「うん。おやすみなさい……実はねお家でのお仕事が多いくて最近、誰かとお話しする機会がほとんどなかったの」
佳純は眉を下げて、少し寂しそうに千春に語る。
「千春ちゃんがちゃんとお話し聞いてくれたから嬉しくなってついおふざけちゃった……本当にごめんなさい」
佳純は申し訳なさそうにぺこりと頭を下げて謝った後に自分の部屋に帰っていった。
千春は佳純の背を見送る。
先ほどまでの面倒くさい女ムーブから突然の切り替えに少しずるいなと思った。
そんな儚げに謝られたら許すしかない。
今までの彼女の言動もついやる気がから回ってしまったのかなとかそんな風に都合よく解釈してしまおうとする自分がいるのが千春はちょっぴり悔しかった。
言葉は交わすけれど、人となりはよく知らない隣人の素顔を垣間見た。
今日も今日とて仕事はストレスばかりたまる苦痛だった。でも、今日の終わりに隣人のことを知れて悪くない日だったのかもしれないと千春は考えを改めた。
明日も早い、すぐに寝よう。どことなくさわやかな気持ちでカギを取り出した。取り出そうとした。取り出したかった。
ポケット、カバン、心当たりのある場所に手を突っ込むがない。全くない。
頭を抱えて必死に記憶を思い起こす。
「イラついて閉じた引き出しのなか~~」
もう笑うしかない。
正直、あの会社は不夜城なので取りにはいけるが、取りにはいけなかった。
能力ではなく感情の問題。
そして、何よりも千春は1人ではない。我が家には天使が住んでいるのだ。
すぐさまスマホを取り出してあらゆるSNSからメッセージを飛ばした後に、着信をかける。
「ふっざけんなよ!」
20分ほど何度も通話をかけまくったが我が家の天使から返事はない。
華乃から誘われて入れただけのアプリを何個か起動するが最終ログインは一時間前が一番新しかった。
大体どれかは放置していつもログイン一分前とかのはずだからこれはガチで寝ているのだろう。
千春は訂正しないといけない。今日は最悪でクソッたれな一日だった。
インターホンを押す。正直、千春にとっては一縷の望みだった。
「はい、なんです……あれ、千春ちゃん?」
「あ、あはは。こんばんは、佳純さん」
「うん、こんばんは……とりあえず、ドアを開けるね?」
「ごめんなさい! ありがとう!」
家主である佳純は理由もきかずにすんなりと部屋に上げてくれる。
先ほどから迷惑をかけてばかりで千春は非常に心苦しいが彼女の優しさがとても暖かった。
「どうぞ、上がって。あんまりお部屋の片づけしてないからすごい散らかってるとおもうけどごめんなさいね」
「全然。むしろ私の方こそなんの連絡もせずに押しかけてごめんなさい」
佳純の案内にしたがい千春はリビングに上がる。彼女の部屋は千春のイメージとちょっと違った。
目に入ったのは窓際にあるテレビと中央に置かれた背の低いテーブルといくつかのクッション。空気清浄機。ゴミ箱。
それだけだった。リビングから少し見える他の部屋は多少はものが多い。しかし、どちらかというと参考資料だとかクローゼットがあるだけで収納スペース以外は何かおいてあるとかいうことがなかった。
綺麗好き、というよりは恐ろしいほど生活感が見当たらないと言った方が正確だろう。
恐ろしいと同時に千春は安堵していた。ここまで理想の自分の追及に隙がない佳純が、ひどく機能的な家具の配置になっているのは当然の帰結と思えたからだ。
「というか部屋綺麗ですね」
「そうかな。なんにも置いてないだけだよ」
佳純は謙遜などなく当然の事実のように語る。
「にしても、千春ちゃん。なにかあったの?」
「実は……」
千春は佳純が帰った後の経緯を端的に語る。
「なるほどぉ……それは、大変だったね」
佳純は相槌を交えながら千春の言葉を真摯に聞いている。そして何かをひらめくように両手を叩いた。
「よし! 今日は飲み会をしよう」
「え?」
「千春ちゃん。今日はウチに泊まってパーッと飲みましょう! そろそろお風呂わいたころだから、風邪ひかないようにちゃちゃっと入っちゃって。私はその間にお酒の用意をするから……あ、お酒が苦手だったりする?」
「ないですけど……いいの?」
早口でまくし立てる佳純に、千春はやや気圧されながら尋ねる。
彼女が自分で楽しむものだったのだろうソレを自分が使うというのは千春にとってどうも心苦しかった。
「いいのいいの!……言ったでしょ、最近人と話す機会がなかったって。だから、むしろ私は一緒に飲みたいの。ううん、千春ちゃんじゃなきゃいけないの。ダメ、かな……?」
窺うように千春の顔を見る佳純の仕草はとてもあざとい。普通の女友達であれば気持ち悪いと切り捨てるが佳純の場合は驚くほど様になっている。悔しいが絆されてしまっている自分がいることを千春は認めざるを得なかった。
その後佳純は千春に浴室の説明を簡単に行う。
CMなどやっていないお高いシャンプーやリンスを使っているところから、千春は彼女が成功を収めている側の人間だという片鱗を垣間見た。
「大体わかりました。遠慮なくお借りしますね……ありがと」
「それじゃごゆっくり……あ、着替え置いとくね。来客用に色んなサイズ用意してるから大丈夫!」
なんとなく、むずがゆくなってしまい千春は感謝の言葉が素っ気なくなってしまう。
佳純はそのことを全く気にしないような素振りで微笑み、浴室の扉を閉めた。
「あ~、疲れた」
体を洗った後、湯船に浸かる。千春の疲れた体には非常に沁みわたる。
こわばった体が脱力し、凄まじい眠気が襲う。しかし、千春は決して意識を手放さない。だって風呂上がりに飲む酒ほどうまいものはないと思っているから。
意識を手放す前に千春は湯から上がる。ワクワクしながら体を拭いて用意された着替えを見る。
「まじか……まじか」
正直、目を疑った。別に何か悪いわけではない。サイズもたぶん合ってる。
でも、これは……
「私が着たらイタすぎだろ……ッッ!」
千春は歯噛みして、ぐっとこらえてその衣装をまとった。
「お風呂、ありがとうございました」
リビングに向かいながら上がったことを伝える。少し声が沈んでいるのは眠たいから。千春はそう思ってほしかった。
「か~わ~い~い~♡♡♡」
「やっぱり確信犯か!」
千春はリビングに入るや否やフラッシュを何度か身に受ける。
千春は佳純の欲望に付き合わされていたのだ。
「うんうん。やっぱり千春ちゃんは犬耳がよく似合ってる!」
「あの~、他に服はなかったんですか?」
「猫さんパジャマとウサギさんパジャマとライオンさんパジャマがあったよ。でもでも、猫さんとウサギさんはサイズがきっちりしすぎてるからたぶん、千春ちゃんは苦しいと思って。ほら、おっぱい大きいし! それにライオンさんは私の解釈不一致だったので犬さんパジャマにしました~」
スマホを置いて両手でパチパチと盛り上がっている佳純に対して千春は堪えていた感情が爆発する。
「人の身体的特徴をそんなにカラッというのはどうなんだよ! もっとデリカシー持ってくれよ! それにライオンが解釈不一致ってどういうことだよ。ライオンほど気高くないってことかよ。……そもそもなんで動物のパジャマしかないんだよ! 尻尾とか耳とか誰得ですかって話だろ!!」
息つく間もなく言いたいことを言い終わったあと、佳純のほうを見ると少し俯いていた。
千春は少しだけバツが悪くなる。少し言いすぎていたし、出さないようにいていた荒っぽい口調になってしまった。そもそも、好意で家に上げてくれた人間に対する態度ではなかった。
「か……か……」
佳純が何かをつぶやいている。か……か……帰ってとかだろうか。
まあ、当然だろうと千春は思った。恩を仇で返しすぎた。何を言われてもいい。とにかく謝罪だけはしようと思い千春は佳純の次の言葉をじっと待つ。
「か……かわいいいいいい♡♡♡」
?
「……え、千春ちゃん。可愛すぎるね。え、なに? 誘ってるの? それは誘い受けとみなしていいんでしょうか?」
??
「可愛い、すっごい可愛い! 犬じゃなくてわんこって感じ! 強い言葉を使ってるのに、言いすぎちゃったかなってシュンとしちゃうところも可愛い。優しくすると嬉しくなってすぐに優しさをお返ししてくれるところとか、ブンブンすごく尻尾振ってるところを幻視しちゃってたけどやっぱり尻尾がすごい似合ってるよ! 可愛い!」
???
「え?」
状況が全く理解できず、声も出せないほど驚いた千春だったがようやく少しだけ声を発することができる。
本当にこの言葉が今の千春の全てだった。
「もしかして、私が俯いたとき傷つけたとか思っちゃった? ぜーんぜん、そんなの気にしなくていいよ! だって私、なんにも感じてないし」
「ええ……」
「むしろね、むしろむしろ、千春ちゃんのその気が強そうな言葉遣いが聞けて嬉しいというかその口調で接してほしかったの」
先ほどのやり取りで千春は佳純の人となりが少しばかり見えた気がした。しかし、実際のところは彼女の本質を何もわかっていなかった。
「でもね、私だって外に出たんだったら私の理想の私になりたいわけじゃない? それで、千春ちゃんにその口調でしゃべってってお願いするのは絶対に解釈不一致でしょ? だからね、今回千春ちゃんがウチに上がってくれたのは変えがたいチャンスだと思ったの!」
やはり、佳純はなりたい自分をロールしていたのだとわかると千春は自分の予想が当たり少し嬉しくなる。
決して千春は現実逃避をしているわけではない。決して。
「千春ちゃんとはもっと仲良くなりたかったけど、接点もないし、今回もダメみたいだし、これからじんわり距離を詰めていけばいいかなんて中長期的な計画にシフトしていたんだけれど、本当に因果か神のいたずらか私にツキが回ってきたの」
あ、別にカミサマって言葉も、運命なんて言葉も私はドラマの世界でしか意味をなさないと思っているんだけれどね、と佳純はよくわからない断りを千春に入れる。
「だからね、私が言いたいのは、私は千春ちゃんのことをとっても気に入っているっていうこと。千春ちゃんの言葉で傷ついたことなんて一度もないってこと。背も大きいし、言葉遣いもちょっと荒っぽいけど本当は人一倍繊細で、臆病で、心が優しいキャンキャン吠えるだけのチワワみたいなところがとっても可愛いと思ってるってこと!」
「こんなに嬉しくねえ告白初めてなんだけど……後半に関してはぜってえバカにしてんじゃん」
全く意味が分からない。目の前の女が千春には理解できなかった。一つだけ理解できるのは、本来の口調でしゃべっても何も問題ないということだけだった。
「ごめんねえ、私の話ばっかりしちゃって。私は素面でも問題ないけど、千春ちゃんはもう飲まなきゃやってられないでしょ?」
「ほんとそれ。とりあえず一杯なんかちょうだい」
「はい。ということでご用意したのがこれ!……レモンのヤツと、炭酸の清酒のヤツと、ビールぅ~」
「高い酒ないの?」
出された酒は大衆から人気の高いものばかり。いわゆるいつものって感じだ。千春も大好きだ。
大好きだが、こんな金を持ってそうなヤツの家に上がったら、そりゃ高い酒だってちょっとは期待するのが道理だろう。
「私は違いがよくわかんないから、いつもは買わないのごめんね」
「ふーん、そういうもんなんだ。シャンプーとかトリートメントとか高いやつ買ってたから全部高級志向かと思ってた」
正直、千春としては高い酒の良さを熱弁したかった。しかし、千春自身も気持ちよく飲めればなんでもいいので語る言葉を持っていなかった。
だから、なんとなく話を逸らしながらレモンサワーを開けて一気に飲む。キンッキンに冷えた酒は旨い。何物にも代えがたい。だって、嫌なことを全部忘れられるから。
「そうでもないよ。そりゃ、高い方が品質がいいものは多いけど安いものが悪いってわけでもないし」
佳純はそう言いながら、千春にジェスチャーをして空になった缶を回収する。
佳純も清酒を開けて自分のタンブラーに注ぐ。
「あ、でもこのコップは1万超えてたな。その分、寝落ちしてもほとんどぬるくならない優れものなんだよね」
「酒に対する扱いが雑すぎるんだが」
「お酒はお酒だから。過度に丁寧に扱うつもりも必要以上に雑な扱いをするつもりはないだけだよ」
「へ~、なるほどね」
千春は何もわからなかった。
「作家センセイっていうのはそういうこだわりとか強そうだけど、どうなんですか?」
ちょっとだけ気になっていた疑問を千春は投げかける。
「千春ちゃん。作家ってくくりはそれこそ雑すぎるよ~。作家にだって色々あるんだから」
「あー、白樺派とか写実主義とかってやつ?」
「それは、近現代文学史のくくり。私がいいたいのは~絵本作家とか、ゲームデザイナーとか、漫画家とか作家って言うのはクリエイターの総称なんだから、そういう人がいないとも言えるし、いるとも言えるって感じ」
「え? 佳純さんって小説家じゃないの?」
「うん。小説も書いてるよ」
千春はなんとなく話がかみ合っていないことに気づいた。
「……他には何やってるの」
「え~、気になる? 千春ちゃん、気になっちゃう?」
「そういうの一番いらないって」
「ひどい……あーあ、泣いちゃった」
千春は涙の一つも見せない佳純を冷めた目で見ていた。
何も気にしていない風に佳純は言葉を続ける。
「実際の所はシナリオの時代考証、衣装考証とかそこらへんがメインの仕事になってるかな~……シナリオのふわっとしてるところ、まあ、多いのは食生活とかなんだけどね。この時代のこの文献とこの文献から照らし合わせたところ、プリンが出てくるのはおかしいですね、とかまだピーマンはありませんみたいなね」
「大変そう」
「大変だよ~~、一番大変なのは監修した後に、その作品を見た視聴者の対応かな。自称歴史を少しかじったことがある人とか、ミリタリーマニアとかさ~、自分の持ってる知識を披露したいんだろうね。ここの描写間違っていると思うんですがどのようにお考えですか、見たいなね?……そういうところに限って私が監修した範囲外だったりするんだよ。それ私に聞くな~ってなるしね。でも、大体情報ソースが少ない人が圧倒的に多いの。だからね、これとこれとこれを参考にしているのですが~みたいなこっちのソースを開示すると黙る人が多いかな。知らないって言ったら読んでからご意見くださいって言うとほとんど来なくなるんだけどね」
ニコニコと笑顔で毒を吐く彼女を見て、なかなか底意地が悪いなと千春は思う。でも嫌いはなかった。
「あと、構想段階からがっつりかかわることもあるんだけどね。今までの事例と照らしたけどそれを忠実に守るより一部無視した方が物語が面白くなると思えば無視するんだよ。……その分、どこを無視してどこを守るかの線引きがめちゃくちゃ苦労するわけなんだけど。そしたら無視した部分だけをめちゃくちゃつついてくる視聴者様もいるんだ~。これが一番うざ……くそ……ダル……ごみカスなんだけどね」
「オブラートに包むのを放棄するなよ」
「いいも~ん、別に仕事じゃないんだし」
彼女の頬はほんのりと熱を帯びている。まくし立てて発する言葉から千春は佳純の苦労が窺えた。
「それでね~、まあ、そういう場合は私も責任があるわけだし説明する機会だってあるの。そしたらね、大体言われるのが女がやってるのか、だって」
いや、笑っちゃうよねと、その時のことを思い出すように笑う佳純の表情に他意はないように千春は感じた。
「もう、本当にね。あなたは関わっているクリエイターの性別だけで信頼が揺らぐぐらいの薄っぺらい愛しか持ち合わせていないんですかって言いたくなるのを抑えるのにどれだけ苦労したかっていう話だよね。それで、懇切丁寧にご説明申し上げるわけなんですけれどね。まあ、納得頂けない方が多いわけなんです」
「それは、非常に難しい問題ですね」
「最初の人なんてひどくね。何回も丁寧に説明しても納得しなくてね、最後の方は意味が分からないの一点張りになってくるの。今まで説明したことが全てですって言って切ろうとすると、相手に納得できるほどの根拠を持ってないからだろって煽ってきて~、もう電話切った時には6時間ぐらい話して経ってたっていうの経験したんだ」
「やば」
佳純が語る話は、千春が知らない世界の話だった。自分も厄介な相手を何人も経験してきたが6時間も粘ってくるバカは経験がなかった。
「それからは30分説明して納得されなかったら切っていいって言う私ルールを決めたの。そしたら、行動力のある変質者に付きまとわれたんだ。だから、このマンションに越してきたの」
「情報量が多すぎる」
「その変質者って女の人でね、私のことを男だと思ってたみたい。後半になると、私が偽物でホンモノを出せとか言い出してきてさ……本当にどういう手段使ったかわからないけど私の家を特定してきて変な手紙とか毎日投函してきて面倒だったな」
「もっと何か感じないの?怖いとか、気持ち悪いとか」
「その人はその人。私は私。私の人間関係にその変質者はいないからなにか感じるだけ無駄でしょ?」
「感情のミニマリストじゃん」
千春は何となくわかった。佳純は苦労しているのではない。
自分の障害となる存在が堪らなく不快なだけなのだ。たぶん、寝るだけで詳細な顔や声なんかは忘れるくらいには興味がないのだろう。
だから、エピソードとしては記憶しているが、何を言われたか、何を説明したかも覚えておらず、ただ不快な存在がいた気がする程度になっているんだと思った。
「あれ~、なくなっちゃった」
気づけば、佳純の手元にある清酒が空になっていた。
千春はその間にビールを半分ほど飲んだだけ。つまりそういうことなのだ。
佳純は、ふらつきなく立ち上がり、軽い足取りで冷蔵庫から追加を持ち出してきた。何本か9%の奴もある。
千春は、9%を飲みながら笑顔で次の酒を選んでいる佳純をとても恐ろしく感じた。今まで聞いてきた彼女のどのエピソードよりも怖かった。
「私はい~っぱい話したから次は千春ちゃんの番ね」
「ていっても何話せばいいの」
「はいはーい! じゃあ私から質問です!」
「はい、どうぞ」
「千春ちゃんはネコだと思ってるんだけど、どっちなのかな~」
「……そういうのってやっぱりわかるんだ」
缶を片手にニヤニヤとしながら聞いてくる佳純の顔が不快で、千春は少しだけ眉を顰めた。
「別にもろに出てるって感じでもないけどね~。千春ちゃんはキリっとした美人さんだから彼氏がいても彼女がいてもおかしくなかったよ。ま、今日話した感じからは男の影が徹底的に見えないから確信を持てた。みたいな?」
「え、その笑い方きっしょ」
「や~ん、千春ちゃんお口悪すぎ」
クネクネと身をよじらせる佳純の態度は女性らしいというより、女の悪いところ全部詰め込んで煮込んだとナニカと形容した方が正しい。
千春はただただ気分が悪かった。佳純のことを無視して千春は二本目のレモンサワーを開けて勢いよく飲んでいく。もやもやも苛立ちも全部飲み込んで忘れた。
「ねえね。質問の続き答えてほしいな」
「はあ?」
千春は声のする方を向くと佳純が傍にいた。
「だから、千春ちゃんはキティちゃんなのかな~って」
「そうじゃないって言ったら」
「どんな声で鳴くのかきいてみたいな」
は、と千春が声を出そうとすると体が後ろに倒れる。押し倒された。
「気づいてなかったでしょ?……千春ちゃん、途中から目がトローンってしてたよ」
「最っ悪」
今日はセクハラされる日だ。千春はそう思った。
別に佳純のことを嫌悪しているわけではない。ただ、自分に触れていいのは華乃だけだ。千春はそう思っているから嫌だった。
そして、酒で無体をするというのがひどく許せない。これは華乃だって許せないかもしれない。そう思うくらいには酒に頼るという行為が千春は嫌だった。
しかし、そんな心とは裏腹に千春の体はうまく動いてくれない。
「ふふふ……抵抗できないね」
佳純は馬乗りになって千春を見下ろす。
獲物を見定めるように舌なめずりする佳純の表情はひどく妖艶で、性的な対象として見られているということを意識せざるを得ず千春の嫌悪感が高まっていく。
「どうせ、私のになんか入れてそっちの酒は小細工してるんでしょ」
「え? なんでそんな面倒なことしないといけないの」
「まじかよ……」
佳純の中に入っているアルコールの方が多いはずなのに、ここまで差が出ていることに千春はわりと本気で悲しくなってしまった。
「……ッッ」
「すごくパンパンに張ってるね……相当立ち仕事なんだ」
千春の太ももからふくらはぎにかけて佳純が揉んでいく。ほぐすというよりは、探られているような手つきに声が出そうになるのを抑える。
「あっ、ぴくってした。ここがすごく凝ってるんだね」
「いっっ……!!」
「ダメだよ千春ちゃん、そんな体動かしたら筋肉の凝ってる場所がほぐせないでしょ」
「や……やめろぉ」
正直、襲われるんだと思っていた千春は、佳純の揉み解しの痛みに対する覚悟がなかった。
バタバタと足を動かすつもりだったが、殆ど体が動いておらず、少しだけ体をよじるだけになっていた自分の非力さに情けなくなる。
「……っ!……んぅ……」
「足の裏も相当張ってる。うんうん、頑張ってる証拠だね」
もう、千春に抵抗する気力は残っていなかった。眠いし、酒も入っているし、佳純は揉み解してくれる。
なすがままだった。時折、強く圧迫された時にビリビリと背筋に電気が流れるような感覚を感じた時に声が出てしまうのを千春は抑える。しかし、逆に愛撫を我慢しているような吐息でとても恥ずかしかった。
「足の付け根。ここもすごい凝ってる人多いんだけど……千春ちゃんもすごいね」
「なん……ふ……ぅぅ……で、こんなに……んっ……うまいんだよ」
佳純は足で千春の足を絡めて固定する。
骨盤の周囲をほぐす。神経が集中しているそこら一帯が圧迫されると、肉体の構造的にどうしようもなく、一部は快楽として認識してしまう。
下腹部あたりに甘いしびれが流れるのが千春はなんとなく怖かった。こんな感覚は初めてだったから。
佳純も横になり、千春の耳元でささやく。
「そういうお店で働いてたこともあったからね」
「ん……うぅ……んぇ?」
「こうやってね、ここを撫でてあげるとね。ビクビクって声を抑えて小刻み震えちゃうんだ。男の人も女の人もね」
「んぁ……」
酒気を帯びた吐息が耳を撫でる。それだけで甘いしびれがビリビリと走ってしまう。千春は自分の体が自分のものじゃないような気がして怖かった。佳純の手がよりキワに触れる。
思考がぼーっとぼやけてきた千春はちょっとだけ期待してしまった。撫でられたらどうなるんだろうか。
少しだけ視線を下げる。もう少しで佳純の手が触れそうだ。でも、制止する声が千春は出せなかった。
「あ、でも。ここまでしちゃったら流石にマッサージって言い訳は出来ないか。ね、千春ちゃん」
「~~~~~~ッッ!!」
千春は気が狂いそうだった。心が折れそうになる。
「ねえ、千春ちゃん。マッサージ、続けたいんだけどね。パジャマ、邪魔じゃないかな?」
佳純はどこまでも底意地の悪い女だった。千春に言わせたいのだ。
そして、千春の心を折りたい。言い訳の余地も残さないほど千春に自覚させたい。そんな下卑た思考が窺えた千春は必死に抵抗した。
「脱がなくたって……ふっ……ぅぅ……できる……んっ……だろ」
「そうだね。難しいけれど頑張ってみるね……じゃあ、お腹の方ね」
「へんな……んっ……ところは……さわ……んんっ!……なよ……」
「大丈夫だよ。ぜーったい、触らないから。ここはね腹斜筋だよ。あんまり使わないし流す程度にしとくね」
佳純は掌の面を使って、圧しながら流す。
筋肉の付け根の部分はほぼ胸の近くにあるようで、パジャマ越しに圧迫されると自分のソレが強調されることが千春はひどく恥ずかしかった。そして、下側の付け根は下腹部に近く、佳純の手がするすると下に降りていくごとに千春の体ビリビリとしびれてしまい体がつい跳ねてしまう。
「んん~~~~~~ッッ」
もう千春は限界だった。
自分の体を好きにされているという情けなさと、否応なしに快楽に反応してしまう自分の体に対する羞恥心。そして、全身にずっと流れる甘いしびれ。しかし、決定的な一撃がない。ただただ、切なさだけが募っていく。
華乃以外には触られたくないという自分の覚悟を自分で破らないといけない。しかし、それでも触れてほしと思ってしまう自分がいること、そのジレンマで千春の心はボロボロだった。
従えば楽になるんだろうか解放されるために屈服するのも厭わなくなっていく。
「か……すみ……んっ……さ……んんっ」
「どうしたのかな千春ちゃん」
「わた……ぅぅ……わたし……にぃ……」
「どうしたのかな? よく聞こえないや」
「んん……ぅ……ぅぅ…………」
千春の瞳からぽろぽろと涙がこぼれる。千春は涙の理由はよくわからなかった。
でも、早く許してほしかった。言葉が出てこない、ずっと嗚咽が止まらない。
「ひっ……く……うぅぅ……ひっ……んんっ……うぅぅ」
「ごめん、ごめんねえ。千春ちゃん……いいよ。大丈夫。千春ちゃんはパートナーの子を裏切ってないよ……大丈夫、あなたはしっかり頑張ったよ。今日はもう、休もうか」
「いい……のぉ?……わ、わた……わたし……」
もう、千春の感情はぐちゃぐちゃだった。
どうやら、華乃を裏切るということはなかったらしいことだけは千春にもわかった。
ぎゅっと抱きしめられて、頭を撫でられる。
あったかくていい匂いで、頭を撫でて褒められるなんてことはなかったので、千春はとても安心してしまった。
「……すぅ……すぅ……」
「いい子いい子」
寝息をたてて休む千春の頭を撫でる佳純の表情はひどく慈愛に満ちていた。
「いっつう」
千春は頭を抑えながら目を覚ました。頭痛はあるのになぜか体は軽い。
佳純の仕事の話を聞いた以降から、千春は記憶があいまいだった。
スマホを見て時刻を確認すると、出勤時間の一時間前である。
あたりを確認すると、昨日酒を飲んだリビングのようだ。テーブルの上には置手紙があった。
『千春ちゃんへ、昨日は疲れちゃってたみたいですぐに寝ちゃったね。私がこの手紙を書いているのは5時頃です。たぶん起きないので、この手紙を書きました。冷蔵庫に昨日出し忘れたお刺身と焼き鳥が入っています。勝手に食べてください。今日もお仕事頑張ってね』
その手紙を見て千春は笑みがこぼれた。と同時に絶対に許してはいけないという感情に駆られたが、理由が思い出せない。おもいだそうとすると頭が痛い。
とりあえず、今日は彼女の好意に甘えて、千春は食事をすることにした。
するとスマホに着信があった。
「もしもし」
「千春~! ご飯がないの! ごはんごはんごはん」
「お前、私に言うことないの」
「鍵を会社に忘れるな! しゃかいじんとしてのマナーでしょ!」
「あ~あ~、せっかく、刺身と焼き鳥持っていこうと思ったのにな~……しょうがないから私が全部食うことにするよ」
「え、え~~!? だめ、それはぜったいにだめ! 世界が許しても私が許さないから!」
「……なにか言うことは?」
「千春……だーいすき。はあと」
「…………一切れかな」
「うわ~~ん、ごめんごめんごめん! ごめんなさい! 寝落ちしちゃってごめんなさい! いい子にするから!!」
「……今日は覚悟しとけよ」
「え~~~~……うん。まってるね」
最後にしおらしくなった華乃の声を聴いて、千春はとてもゾクゾクとしたイジメたい欲に駆られた。
とりあえず、部屋に戻って餌付けをしたらすぐに出社しよう。そして、今日は残業なしで帰ろう。
千春はそれを心に誓い、佳純の部屋から出る準備をした。
あくまで天使ちゃん @mousoutouki
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