第9話 修学旅行2日目 -辰巳編-
翌日。
三人は無事、春華のグループと合流し、渡月橋付近を散策する。
昼下がり。辰巳と春華を二人きりにするべく、祐希と琇は他の女子たちと共にランチを取るのだった。
「あれ、みんなどこ行ったんだろ」
春華が周囲を見渡すも、辰巳の他に誰もいない。
「ほんとだ。どうする? 探す?」
「んー、でもお腹すいたし、二人でご飯どう?」
春華からの誘い。辰巳に断る理由などなかった。
「いいね。あそこのカフェとかいいんじゃない?」
「ほんとだ! めっちゃかわいい! いこいこ!」
嬉しそうな笑みを浮かべて、春華は辰巳の袖を引く。
辰巳はニケやそうな顔を取り繕うのに必死だ。
二人が入ったカフェは、外観が日本庭園を思わせるような風貌。店内は木材を基調としたレイアウトで非常に落ち着きがある。
「わぁっ! 京都っぽいね。すごくいい!」
入った途端、歓声をこぼす春華。
「いらっしゃいませ。お二人でよろしいですか?」
二人というワードに、春華と二人きりでいることをより強く意識してしまう。
春華が、「はい」と答え、店員が席を案内する。
二人が案内されたのは、二人掛けのベンチに、横に長い木目調の机。いわゆるカップルシートと呼ばれるもので、辰巳と春華は隣り合ってベンチに腰掛けた。
「隣に座るってなんか新鮮だね」
辰巳がそう言うと、春華もうなずき、照れながら答える。
「やっぱ辰巳くんは横に座ってくれる方が、安心するよ」
二人はメニューを取り、何にしようかと悩む。
「あっ、この抹茶パンケーキ美味しそう!」
「ほんとだ。こっちの『みたらし団子とあんみつセット』も良さそうだね」
「うわー、ほんとだ。どうしようかな」
春華が悩みの迷路に入っていく。数秒後、さっと顔をあげ辰巳に顔を向ける。
「ねぇ! 分け合いっこしようよ! おっきいの頼んでさ、二人で分けたら安いし、いっぱい食べられるし最高じゃない?」
春華の提案は、もうカップルのそれだったが、辰巳は恥ずかしさを押し殺し、絶好の機会をものにする。
二人は仲睦まじく昼食の時間を共に過ごした。
辰巳と春華は、なんともない顔をして祐希たちと合流する。
「(春華とはどうたったんだよ)」
「(すげえよかったよ。手ごたえありだ)」
「(僕も負けてられませんね)」
二人の問答を聞いていた琇は、一人メモ帳を握りしめた。
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