第7話 図書館だより

 水曜日の昼休み。図書室横の準備室では、図書委員会の定例会議が行われていた。

「じゃあ今度の図書館だよりは、佐々木と渡邊に担当してもらう」

 委員長が琇と春華を見ながらそう言い渡し、定例会議はお開きとなった。

「ハルさん、図書館だよりって作ったことある?」

「いやはじめて。琇くんは?」

「僕も、はじめてです」

 準備室に残った琇と春華は、次回の図書館だよりに向け、頭を悩ませていた。

「うーん、もうすぐ修学旅行だし、旅もの特集なんてどうかな?」

「いいですね。ハルさん旅ものってなにか読んでます?」

「んー、あんまり読んでないかも」

「僕もあんま知らないんですよねぇ」

 同時に「うーん」と腕を組んで唸る二人。仕草まで一緒になっていたことに春華は吹き出した。

「あはははは! はぁ~、おかしい」

「全部一緒でしたね」

「似たもの同士だね、私たち」

 ニコッと笑う春華に、琇の心は打ちぬかれていた。そしてこの高揚感が琇に思い切りの勇気を与えた。

「ハルさん、連絡先、交換しません?」

 協定を破る罪悪感と、春華に申し出る緊張感。琇の心音は外にもれそうなほど、激しく鳴っていた。

「たしかに、今日だけじゃ決まりそうもないもんね。しよしよ」

 そう言って互いのカバンから携帯を取り出す。アプリを開き友達追加を押す。手慣れているはずなのに、琇の手は小刻みに震えていた。

「これで……っと。じゃあ、またこっちで連絡するね」

 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、春華はカバンをもって教室へ、琇は準備室の鍵をかけ、職員室に返しに行った。



 祐希と琇の違反行為を目撃した辰巳。彼はひとまずその場から立ち去り、自宅へと帰っていった。

 トークチャットで告発してやろうかと思ったが、ネット上だと分が悪いと考え、週明け、いつもの帰り道で辰巳は轟々と怒りの声をあげたのだった。

 二人は互いに首をすくめ、改めて誓いを新たにする。

 祐希はもう二度と外で会わないと。琇は制作以外の連絡は取らないと、誓った。

 そして月日は流れ、二年生たちがいく、二泊三日の京都修学旅行。その出発日となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る