第6話 協定違反
遡ること一週間前、祐希は春華へのアプローチとして、春華と仲の良い女子グループとの接触を図った。
持ち前のコミュ力で、女子たちに認められ、祐希は春華がいる女子グループと一緒に、休み時間を過ごすことが多くなった。
そんなある日、
「なぁ、今度の日曜さ、みんなでミツバいかない?」
祐希が休日遊びに行こうと切り出した。
「いいね! 私ちょうど買い物行きたかったんだ~」
祐希の提案に乗ってきたのは春華だ。
「お、ちょうどいいじゃん。他のみんなは?」
「うーん、もしかしたら家の用事があるかも」
「私はいけなーい。その日部活だわー」
「うちも行きたいけど、ちょっと金欠で、土曜までに連絡するでもいい?」
「もちろん! 日奈も香蓮も、行けそうだったら俺に連絡ちょうだい」
こうして祐希は春華とのデートを無事画策することに成功した。
(これで日奈と香蓮に、やっぱ無しになったって連絡すれば、俺は不可抗力で春華とデートができる! これはギリセーフだろ!)
三橋ショッピングモール、通称ミツバにて。
辰巳はこっそり、春華と祐希のあとをつけていた。
(これはアウトだろ! 協定第一条、春華と会うのは学校の中でのみを違反してる!)
もし、隣に祐希がおらず春華だけだったら、その時取るであろう自分の行動はいったん棚に上げ、辰巳は現状協定を破っている祐希に、多少なりとも憤りを感じていた。
(祐希てめぇ、軽々と協定破ってくれてるじゃねぇか)
怒りのオーラをにじませながら、二人をつけていく辰巳。春華が祐希から離れたタイミングで、接触を図る算段だ。
しかし、離れたのは祐希の方だった。春華を置いて祐希はトイレに向かった。
(これはこれでチャンス! 春華と偶然会ったことを装えば)
辰巳は、速足で春華に歩み寄る。そして声をかけようと思ったそのタイミングで、春華の携帯に着信が入った。
「もしもし? どしたの琇くん?」
「(は⁉)」
辰巳の声は若干漏れていた。だがそんなこと気にしてる余裕はなかった。
「(琇⁉ 琇からの電話なのか⁉)」
バレないギリギリまで近づき聞き耳を立てる。
次回の図書館だよりがどうの、来週の当番がどうのと、図書委員の話をしているようで、電話の相手は琇であることは間違いない。
(あいつも、協定を破りやがったのか!)
恋愛協定第二条、連絡先は交換しない。
琇は、先週の委員会で、春華の連絡先を交換していた。
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