別れ
解りきっていたことだ。
以前何度も泣いたせいか、昨日の昼泣いたのが良かったのか、
村の者が集まって葬儀を開いてくれても、涙はちっとも出なかった。
土を掛けられてゆく相楽の棺に手を伸ばしたが、あの日のように袖を掴むことは出来なかった。
「あっ・・・。」
あるわけがないのに赤い細い花びらが風と共にお満の頬を撫で、通り過ぎて行く。
また、あの人は遠くに行ってしまったのだ。
また足取りが危うくなった。
婆様が咄嗟に体を支えてくれる。
「代わってやれれば良かったのに・・・。」
寿命の話だろう。
声を上げて叱ってやりたくなったが、体に力が入らず、
「嫌・・・。いや・・・。」
と蚊の鳴くような声が出た。
「すまねぇ。すまねぇ。」
と言ってお満の代わりに婆様が泣き出した。
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