報告

今は秋も中程に差し掛かり、少し肌寒い。


ややこができたと告げると、相楽は息を呑んでじっとお満を見た。


「そうか・・・。」

と言って、恐る恐ると言った様子でお満の腹に触れると、

まだそこまでハッキリとはわからぬだろうに、またいつもの遠い目でふっと笑って。


「成程成程。」

と静かに呟いた。


婆様とこの村の人間以外に頼れる者がいるか尋ね、

地図と文を書くからそこを訪ねるように言ってきた。


また、母体に病が移るといけないと言って、

できるだけ相楽から離れるようにと努めて冷静にお満に言い聞かせて来る。


お満は出来ればでかしたと言って欲しかったが、思わぬ言葉を貰ってしまい、

久々に泣きながら相楽に対して怒ってやった。




「移る病ならとっくにおらだって床に伏してる。


なして、なして共に生きよと言ってくれねぇんだ。


それも駄目なら連れてってくんろ。」


相楽は久々に怒るお満を見て茫然としていたが、

口をぎゅっと引き結んで眉をぐっと寄せ、耐えるように目を瞑った。


そして、お満は相楽の顔を覗き込む前に腕の中に囲われてしまった。


急に抱き寄せられ、驚いて固まってしまったが、

お満は相楽の背が震えているのに気が付いて力を抜いた。


相楽は静かに、

「でかしたお満。我の子を産め。」

と言ってくれた。


言葉尻が少しばかり体と同じで震えているのを感じる。







お満は優しく相楽の背を撫でると、相楽の腕の中でこくりと頷いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る