目覚め

それから二日が経った夜の事だった。


もう遅いからと婆様を無理矢理家へ帰し、

いつも通り相楽にしてやれることはないかとじっと見つめていると、相楽が少し身じろぎをした。


おミツはあわてて床の側に寄ると、小さな声で相楽に声を掛けてみる。


それだけでは反応が無い。


額の汗を拭うと、薄っすらと目を開けてこちらを見た。


相楽は起き上がろうとしたが、力が上手く入らないらしい。


前のめりに倒れそうになったのを、おミツはなんとか支えた。


相楽の顎がおミツの肩に乗る。


普段ならばきっと何も考えられないくらいに緊張していただろうが、

相楽が目を覚ましたことの方が嬉しくて泣きだしてしまった。




「もう鍛錬に行くのはお辞めください。死んでしまいます。」


おミツは、無意識の内に相楽に強く抱き着いて、相楽の寝間着を強く掴んだ。


相楽の喉がぐっと鳴るのがわかる。


状況が上手く把握できていないのかもしれない。


暫く声を挙げて泣いていると、頭に手が置かれた。


泣き顔を見せるのも、どこかに行かれてしまうのも嫌で、さらに手に力を入れる。





もう斬られたって構うものか。

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