離せぬ手

相楽は暫く目を覚まさなかった。


今度こそこのままあの世に行ってしまうのではないかと思うと、

何も出来やしないが離れることも怖い。


村にいる少しでも病の手当てに覚えのあるものが代わる代わる来たが、

皆眉を顰めてもう出来ることが無いという。


そもそも医者すらいない村だ。


医者を探しに行くには数里ある町まで出なければならないが、

医者がいるかも町もどうなっているかわからない。


行くまでに野盗や首を欲しがる連中に襲われるかもしれない。


行くとしたら年若いおミツだが、相楽の死に目に会えぬかもしれないし、

おミツに何かあればそれこそ婆様を一人にしてしまう。





村の皆々はおミツに最期に縁者もいないのでは、

せめて世話をしていたおミツはいてやるようにと言って、優しくおミツの頭を撫でて行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る