第34話 カインとミーニャ再び
場所はポイドンの街中にある飲み屋。
久しぶりに会ったカインとミーニャと俺とアリシアの4人でテーブルを囲んでいた。
「それではタツヤの再開とアリシアの出会いにカンパイ!」
カインの音頭で食事会が始まった。
「それでもタツヤがこんな可愛い彼女と旅をしているなんてうらやましいぜ」
カインがいきなり突っ込む。
「あら、カインは私と冒険をしているのがつまらないの?」
ミーニャが何故か鋭い目でカインを睨む。
「ミーニャなっなに言っているんだよ」
カインは焦ったのか頭の後ろをかきながら誤魔化していた。
「それで、タツヤ相談しに来たんだろ?」
カインが少し真面目になり俺に目線を送って来た。
俺はアリシアとの出会いから今までの事を出来るかぎり細かくカインとミーニャに話した。
「と言う訳で、マダン王国に住むマダンの魔女をご存じかなと思いまして」
「ああ、会った事あるぞ」
カインがさらりと答える。
「あった事あるんですか魔女に!!」
そんな大声を出したのは俺の隣にいるアリシアだった。
アリシアは自分が大きい声を出したのが恥ずかしくて少し頬を赤らめた。
「会った事もあるし話した事もあるが俺からは詳しい話は出来ない」
カインの言葉で少しばかり場が静まった。
「どうゆうことなんですか?」
俺は直ぐにカインに質問した。
「契約なんだ。人にペラペラと話さないと言う」
俺はカインの言っている意味が解らなかったが詳しくなければいいと考えた。
「それでは少し質問を変えます。マダン王国に魔女の弟子と名乗る少女が現れるそうですが知っていますか?」
「魔女に弟子はいない、いや聞いた事ない」
そして俺が声を上げようとするとカインは言葉を続ける。
「たぶんだが魔女の弟子が魔女その者だ」
俺は魔女がアリシアが求める認識阻害の魔道具を使っているのではとの予測を立てた。
「今もマダン王国に現れるのですか?」
「それは知らない」
カインの言葉でそれ以上は聞くなの意志を感じたので俺は別の話をする事にした。
「魔女の話はこの辺で辞めときます。カインさんに迷惑を掛けたくはないので」
「ああ、そうしてもらうと助かる」
次に俺はキールの街でクロヒョウ族の奴隷を買った話をした。
「あら、タツヤは大人の階段を上ったのかしら」
ミーニャが突然横から突っ込んできた。
「なっ何を言っているんですか?俺は人助けをしただけですよ」
俺はなんとか言い訳をする。
「まあ、いいわ。それでそのクロヒョウ族がどうかしたの?」
「先ほども言いましたがクロヒョウ族は魅了を得意としているんですか?」
カインとミーニャは顔を合わせた後カインが口を開いた。
「まず前提としてタツヤの認識が間違っているからそこから話す。獣人族の女性全てが魅了と言う特殊な技を使う事が出来る。当然だが変身後に多く使われていて子供で使えるのはほぼいないと認識している」
俺は直ぐに聞き返した。
「あの変身ってなんですか?」
「変身とは人間で言うと子供から大人に変わる成長期の事だ。人間なら数年かけてゆっくりと子供から大人へと変わって行くが、獣人族は約10日で子供から大人へと変化する。それを変身と呼んでいる」
「変身は何歳位で起こるのですか?」
「だいたい15か16歳だ」
「でもリリアは16歳でしたが子供でしたよ」
「俺はリリアと言う獣人を見ていないがタツヤの話だと元奴隷と言っていたことから、体に栄養不足で変身に至っていなかったんじゃないかな。もしその獣人に次に会う時にはタツヤは目が飛び出るかもしれんぞ」
「どうゆう意味ですか?」
「変身前と変身後では別人と言う訳だ」
俺はカインから聞いた話を頭の中でゆっくりと整理をしているとカインから声が掛かった。
「ところでタツヤ」
少しカインが真剣に俺を見る。
「俺とミーニャはお前にとってどんな存在だ?」
「えっと戦い方やいろんな事を教えて貰った師匠だと思っています」
「うむ、いい返事だ。そこでだ、師匠の頼みなら聞いてくれるよな」
俺は嫌な予感がしたが断ることは出来ない。
「はい、俺の出来る事なら」
「実は」
カインが指で上を指して話を続ける。
「から話があってな、小規模な魔物の
俺はカインの指の仕草で直ぐに誰からと言うのが分かった。
たぶんアリシアに知らせないような配慮だと思う。
「それを手伝えばいいんですね」
「話が早い」
「もちろん手伝いますよ。お金も欲しいですからね」
「はは現金なやつだな。ただ、ギルドの依頼じゃないから売れるのは魔物と魔石だけだぞ」
「ええ、それで構いませんよ」
俺はそこでアリシアに問う事にする。
「アリシアは今回の戦闘はどうする?怖かったら来なくてもいいよ」
「なんでそんな事言うんですか?素直に行くぞとだけ言えばいいじゃないですか」
アリシアは悲しい目をして黙ってしまった。
俺はヤラカシタと思った。つい、優しさと思い発した言葉が逆に彼女を気づつけてしまった。
「ごめんアリシア。俺達の後ろを守って欲しい」
「はい、喜んで。タツヤ様」
アリシアは今のがウソ泣きのような笑顔で答えた。
あっ女はこうゆう生物なんだと俺は今悟った気がした。
その後俺達4人で魔物討伐の打ち合わせを行い、この日はカインとミーニャが泊まる宿にお邪魔する事にした。
俺はカインとアリシアはミーニャと部屋を同じにした。
「しかしタツヤも世話好きだな」
カインが部屋に入るなり語り掛けて来た。
「俺もそう思いますよ」
「それでさっきの魔女の話で出て来た認識阻害の魔道具だったか?」
「はい」
「正直それを手に入れても解決にならないと俺は思うんだが…」
やはりカインも直ぐに気づいたか。
「俺もそう思いますよ。でも、アリシアがそれを手に入れた後決めればいいので、俺は魔道具を手に入れてアリシアをライラ国まで送るまでの手助けをするつもりです」
「それで終わるのか?」
「終わります。いえ、終わらせます。俺が受けた神様からの依頼は俺が出来る範囲で人々を助けるですから、一人だけをずっと助ける訳にはいきません。恐らくかなりの心残りが出ると思いますけどね」
俺は苦笑いをした。
するとカインは俺の両肩に手をバシッと置いて語る。
「魔物討伐が終わったらアリシアと言う女を忘れる場所に俺が連れて行ってやる。その代わり全力で魔物を倒すぞ」
「はい、全力でやります」
俺はカインの目を見て真剣に答えた。でも、女を忘れる場所とは?俺は気になったがお楽しみは後にしようと眠りについたのだった。
翌日俺達はキャンプに必用な物資を大量に買い込んで森へと出発した。
ちなみに支払いは全てミーニャが行ってくれた。
なぜか金貨を見るたびにカインの目が泳いでいるように見えた気がした。
俺達はカイン達の案内で森深くへと来ていた。
流石にアリシアには俺達の行動スピードが早すぎたのか息を切らしていた。
「よし、ここにベースキャンプを設置する。アリシアにキャンプ設置を任せていいか?」
カインがアリシアに問う。
「大丈夫です。出来ます」
「よし、任せた。ミーニャとタツヤは俺について来い。周りにいる魔物をせん滅する」
俺は目線だけでアリシアにエールを送る。
アリシアもそれに気づいたのか笑顔で送り出してくれた。
この場所には近くに大きな湖がある所で水も確保できる事からここが選ばれた。
そして俺達が湖に近づくと魔物が群れをなしていた。
蟹の魔物だ。
「ウォータークラブかめんどくさいが安全の為に狩るか」
カインが独り言のように呟く。
見た目は大きな赤い蟹。体の大きさは3メートルほどだが両足の全長となると7メートル程になる。特徴は前に構えたおおきなハサミで力が強く切断はお手のモノだ。それに体を覆うのは硬質な物となっていて傷をつけるのは困難な水辺の生物。
「奴の弱点は火と関節だ」
まあ、蟹だから当然かと俺は思いつつ魔法の準備をする。
「行くぞ!」
カインの掛け声と共に俺達3人は湖のほとりへと飛び出した。
俺達が飛び出すと同時に魔物たちは俺達の方へ一斉に視線を向けた。
そして最初にミーニャが魔法を放つ。
それは手のひらから多量の火の矢を放つ魔法だった。
火の矢は魔物の体に突き刺さるが致命傷とは言えない。蟹の魔物は体に火の矢が刺さったままでも脚を止めなかったからだ。だが、数匹には火の矢が目に刺さり魔物の脚が止まるのが見えた。そこへカインが剣を抜いて突っ込む。
カインは魔物が振るった右の大きなハサミを避けるとその関節に器用に剣を差し入れると反動を使い上へ跳ねあげる。
その瞬間に関節より切断されたハサミが宙を舞う。それを切っ掛けにカインは次々と蟹の魔物の攻撃力を
俺はその攻撃を見ながら魔法を発動させる。
「炎よ!」
その瞬間に剣に炎を纏わせる。そして身体強化を発動させ俺は蟹の魔物へと切り掛かる。俺は力を込めて頭の真上から一気に切り裂く。切り裂かれた魔物は頭の真上から真っ二つに切り裂かれ絶命する。
「やるじゃないかタツヤ!」
カインから誉めの言葉が飛ぶ。
「だけど魔力を使い過ぎるなよ」
カインはそれだけ叫ぶと俺から離れて魔物へと突っ込んでいった。
それから俺達は泥だらけになりながら湖の周りの蟹の魔物ウォータークラブを狩りまくった。
俺達は倒したウォータークラブをアイテムボックスへ回収しながら拠点となるアリシアの元へ帰った。
「おかえりなさいタツヤ様」
アリシアは笑顔で俺達を迎えてくれた。
周りを見るとテントは設置されて火が焚かれていて準備は万端だった。
「ただいま。アリシア準備ありがとう」
「いえ、当然の事をしただけですよ。それで今日の夕食は…」
アリシアが言いかけた時にアリシアの腹から「キュルキュル」と可愛らしい音がなった。
アリシアは真赤な顔をして自らのお腹を押さえて恥ずかしがる。
俺は何事もなかったようにアイテムボックスから蟹の腕の一部を出す。
「今日は蟹鍋にしよう」
俺の言葉でその夜は蟹鍋で腹を満たす事になり皆で鍋を囲んで楽しんだ。
「明日から本格的にスタンピードの魔物の駆逐に入る」
腹が少し落ち着いた所でカインが語る。
「明日からが本当の地獄の始まりってね」
そして翌日から本当の俺達の地獄が始まった。
*
あれから何日が経ったのだろう。
来る日も来る日も変な魔物達が20~30の群れを成して時間を置いて森から行進してくるのだ。それを俺達はひたすら狩り続けている。アイテムボックスに魔物は無限の様に入るが、価値のない魔物はキャンプ近くでアリシアに魔石だけを取っ手もらい死体は穴に埋めて貰っている。
そんな感じで地獄な日々を送っていたのだが、少しはいい事?があった。それは食事だ。たまにではあるが牛の魔物が襲ってくることがある。全長が5メートルにもなる狂暴な奴だがコイツは食べると旨い。俺は日本でも焼肉に言って肉を食べた事があるが、それでもコイツの肉にかなう肉はないんじゃないかと思うほどだ。
そしてもう一つだが、それはカインとミーニャからいろいろな情報や魔法そして技を教えて貰った事だ。
正直役に立つ立たないは別として面白い物がたくさんありそれを実践で練習しながら戦った事もあった。だがそんな日々を送っていても疲労はどんどん蓄積していった。
ある日の事。
「カインさん…まだ…終わらないのですか?」
俺は体的にも精神的にもボロボロになりながらカインに問う。
「そろそろだ、もうそろそろ終わるはずだ」
「それ前にも聞きましたよ」
カインは俺の言葉で押し黙る。
そして俺は久しぶりに『サーチ』の魔法を森に向け発動する。
すると初めて変化がおとづれた。
いままで点々と赤い魔物のマークがあった物がある魔物を境に途切れていたのだ。
「カインさん、次が少数ですが最後だと思いますよ」
「そのようだな」
そして俺達の前に現れたのは角ウサギだった。体の大きさは1メートルにも満たない大きさで白色の毛におおわれていて、頭に短い角を生やした赤い瞳をした魔物だ。
「フライングラビットか、最後の敵にしては美味しいが大変だな」
カインが呟く。
「タツヤ良く聞け。あいつは空中から突進をして攻撃をしてくる魔物だ注意しろよ」
俺はあまり意味が解らなかったが返事をする。
「頭の魔石は魔法の鞄に使われる美味しい奴だ、全滅させるぞ!」
カインの説明が終わると同時に1匹のフライングラビットは地面から大きくジャンプをした、そして空中に体を浮かした瞬間にまるで弾丸のように頭の角を先頭に突っ込んで来る。
カインはギリギリの所で回避に成功しウサギの飛んで行った方向へ向けて駆けだす。そしてウサギが地面に着地した瞬間にとどめを指した。
俺はその光景をみながら真似をしようとしたが、ウサギの突進スピードは俺のヤバイ領域に達していた。目力の心眼を用いてもギリギリさけれた位で服は薄っすらと切り裂かれたくらいだった。
そして俺は何度かかわしている内にある方法を考えた。それはウサギが飛んで来たら剣を立てると言う方法だ。ただ、額の魔石を気づつけないようにしなければならないので神経を使うが、交わすより楽だと思い実行する事にした。
そして一体のウサギが俺の方へ飛んできた瞬間に俺は剣を立てた。
その瞬間にウサギの2枚下ろしが完成した。
だが後ろから声が飛んできた。
「タツヤ!フライングラビットの毛皮売れないじゃないか!」
カインの叫びだった。
俺はこの後に及んでせこい事言っているんじゃねぇ~とよ心の中で呟いたが、その言葉は飲み込んでカインと同じ方法で命を削りながら俺達はフライングラビットの討伐を終えたのだった。
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